捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
クララは嬉しそうにしている。


「ギルバート殿下はこの歳まで婚約者すら迎えていないんだ。アシュリーに………いや、今はやめとこうか」


ロイスが言葉を途中で止めた理由……それはアシュリーがまだオースティンに婚約破棄されたばかりで憔悴していると思っているからだろう。
アシュリーとオースティンの婚約が破棄されたことは、すぐに広まったそうだ。
異世界から舞い降りた〝本物〟の聖女であるユイナが、オースティンの婚約者となった。
結婚したことを国民に知らせることで安心させて、王家の信頼を回復するつもりなのかもしれない。

エルネット公爵家で治療を受けていた貴族たちは我先にとアシュリーと力を手に入れようと動くだろう。
エルネット公爵たちが厄介だとしても、その力を手に入れる価値は高い。
ギルバートが動いてくれるまでには耐えた方がいいだろうが、あの二人が次にどう行動するのかは大体予想がつく。

(……ふふっ、これからが楽しみだわ)

ギルバートが迎えに来るまでアシュリーは、クララに部屋まで食事を運んでもらった。
ロイスと二人きりで囲むテーブルはいつもと違って見えた。
今までは両親と共に三人で取っていた食事を、ロイスがここにいる間は一緒に食事を取りたいとお願いしたのだ。
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