七日目の恋 ダリウスとリセ・改訂版・魔法の恋の行方シリーズ
ガンガン
いきなり、車の運転席の窓ガラスが叩かれた。
リセが驚いて見ると、ダリウスが立っていた。

ポケットに手を突っ込んで、ふてくされた顔をしている。

今日は、お持ち帰りはいないのか・・・
リセは急いで車を降りて、後部ドアを開けた。

「どうぞ・・お帰りなさいませ」

ダリウスは何も言わず、乗り込んだ。

この不機嫌さは・・・めぼしいお持ち帰りがいなかったか・・
失敗したか・・
いや、この男は女で失敗はないだろう。

リセは時折、バックミラーで彼の姿を確認しながら、考えていた。

ダリウスは、あごに指をあてて、窓の外の景色を物憂げに見ている。

疲れているのか・・それとも・・別のなにか・・

「シナモンの匂いがする・・」
窓の外の景色を見ながら、ダリウスが唐突に言った。

「はいぃ?・・」

リセは心臓が止まる思いで、
ハンドルを握る手に思わず力が入ったが、何とか平静を取り繕った。

待機中に、かじったクッキーの匂いが残っていたか・・・

リセの好きな物・・
それはシナモン入りのクッキーだ。

昨日は、お持ち帰り女性の香水でまぎれたから、ばれなかったが・・

「失礼いたしました。換気をいたします」

リセは窓を少し開けて、空気を入れようとした。

「いや・・かまわない」
ダリウスは窓の外を見ながら、
そう答えた。

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