七日目の恋 ダリウスとリセ・改訂版・魔法の恋の行方シリーズ
その中を、白鳥たちが幾重にも
さざ波を立てて泳いでいた。

ダリウスは、リセの手を強引に引っ張ったまま、貸しボートハウスに向かっていた。

え・・え・・えっ・・
私はボートなんて漕いだことがない・・

リセは焦って、身をそらすようにブレーキを試みたが、無駄だった。

「ダリウス様・・私はボート、
漕いだことはありませんっ・・」

リセの努力もむなしく、ダリウスに再度、引っ張られてしまった。

「バカ・・お前には頼まない。
俺がやるから安心しろ」

ダリウスはリセの手を離すと、
店の親父に金を払い、先にボートに乗り込んでしまった。

「早く来い!」

桟橋で立ちすくんでいるリセに向かって、ダリウスは大きな声で呼んだ。

護衛は・・
いかなるときも、主人の側に控えていなければならない。

拒否権はない。
リセは・・・そろそろとボートの縁に足をかけた。

チャプン・・
揺れるのと同時に、水音が響く。
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