七日目の恋 ダリウスとリセ・改訂版・魔法の恋の行方シリーズ
リセは、生まれてからこの方、ボートなんか乗ったことがない。

「俺の手をつかめ」

ダリウスの命令が下ったので、リセはおずおずと自分の手を差し出した。

ボートは揺れたが、リセは何とか座る事ができた。

ダリウスはゆっくりとオールを操作して、漕ぎ始めた。
ボートが滑るように進んでいく。

リセは揺れるのが怖くて、身を固くしてボートの縁を握りしめていた。

魔女は・・泳いだ事がなかったのだ。

水の中で魔力をどの程度、使うことができるのだろうか・・リセは考えを巡らしていた。

「リセ・・突き落としたりしないから、安心しろ」

ダリウスがからかうように声をかけた。

「はい・・」

水面がキラキラ揺れて光る。
風が吹くと、その痕跡は幾重にも波紋を描き、消えていく。

ようやくリセにも余裕が出て、正面のダリウスを見る事ができた。

サングラスの彼は・・
なぜか楽しそうに見えた。
< 30 / 92 >

この作品をシェア

pagetop