七日目の恋 ダリウスとリセ・改訂版・魔法の恋の行方シリーズ
この人の優しさ、気づかい・・・
リセは、シナモンの香りの中で考えていた。

この二人だけの共有する時間は・・・静謐で穏やかだ。

が、今は勤務時間なのだ。

リセは食べ終わると<切り替えねば>と・・自分に言い聞かせた。

ダリウスの行動は、予測不可能だ・・・

この優しさも、こちらを油断させるための伏線かもしれない。

「手を洗いたいのですが・・」

リセは立ち上がり、アイシングでべとべとになった手を見てから、次にダリウスを見た。

リセの疑いの視線を感じたらしく、サングラスの下でダリウスが笑った。

「逃げないから・・心配するな」

リセの脳裏に、引き継ぎ書の<虚偽発言>が浮かび、再度ダリウスを見た。

「用心深いな・・まったく・・
一緒に行くから」

ダリウスは苦笑して、ベンチから立ち上がった。

リセがボート小屋の裏手の水道で、手を洗い終え、ハンカチを取り出そうとした時だった。
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