七日目の恋 ダリウスとリセ・改訂版・魔法の恋の行方シリーズ
アラステアの山荘は・・

山荘というより美しい貴族の館・屋敷のようだった。

建物はコの字型に立てられ、右翼と左翼の3階建てだ。

大理石をふんだんに使った正面玄関は中央にあり、車寄せも大きい。

玄関の両脇には、大きなつる薔薇の木が3階まで繁り、
小ぶりの白い花が、隙間なく咲き誇っていた。

「ここで待っていろ」

ダリウスはそれだけ言うと、花束を持って玄関の大きな扉の鍵を開けた。

そして屋敷の中に入って行った。

リセは車のそばで、ゆっくりと庭を見回した。

昔は栄華を極めたのだろう・・

正面の庭には、ところどころに
ライオンの彫像や、噴水、池があった。

しかし、水が枯れて石組がむきだしになっていて、まばらに苔が生えている。

庭師の手入れもないのか、木が茂りすぎて、荒れているように見える。

廃墟・・を思い起こさせた。

リセは玄関脇のつる薔薇のそばまで歩いた。

ミツバチたちがせわしなく、花から花へ飛び交っている。

ダリウスの母親も、この薔薇を毎日見たのだろうか。

この庭で声を立てて笑ったり、遊んだりしたのか・・

きっと、美しい娘だったろう。

華やかなドレスを身にまとい、
幸福な日々を送った・・・はずだが

今はもう誰もいない。

ピ~ッ  バサバサバサ
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