ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
リビングを終えて、廊下や洗面所、今現在居候させて貰っている洋室へと回っていくが、穂香は川岸の寝室の前で掃除機の電源を切った。さすがにここに勝手に入り込む訳にはいかない。穂香は川岸にとって、ただの部下で居候でしかない。家族や恋人のような近しい関係ではないのだから、プライベートな空間に黙って踏み込むつもりはなかった。
一通りの家事を済ませると、夜ご飯の買い出しの為にとキッチン周りを確認していく。飲み物と種類の少ない調味料だけが入った冷蔵庫。ラップ類が収納されている引き出しを開くと、アルミホイルだけがやけに沢山あって首を傾げてしまう。
そう言えば、洗面所下の収納に入っていた歯磨き粉の数も尋常じゃなかった。彼一人では一年かけても使い切れないのではないかと思うほどの量だ。
「そろそろ無くなりそうな気がして買ってくるんだけど、買ってこないといけないのは別のやつだったとかか」
どういう経緯でこの在庫量になったのかを聞いた時、川岸自身も首を傾げていた。毎回、朧げな記憶を頼りに買い足すからつい間違った物を買って来てしまうのだという。店の在庫数には細かいくせに、家のこととなると急に適当になる。仕事とプライベートの顔がまるで別人だ。他のスタッフはこんな気の緩んだオーナーのことを知らないのかと思うと、少しだけ優越感を覚える。
買い足しが必要だと思う物をメモしながら、穂香は夕飯の献立に頭を悩ませる。『セラーデ』に勤務してからもうすぐ3年にはなるが、オーナー自身のことはあまりよく知らない。食の好みが分からない人に料理を振舞うのは少し勇気が要る。ただ、こないだの飲み会では食べ物の好き嫌いは特に無いと答えていたのが救いだ。
一通りの家事を済ませると、夜ご飯の買い出しの為にとキッチン周りを確認していく。飲み物と種類の少ない調味料だけが入った冷蔵庫。ラップ類が収納されている引き出しを開くと、アルミホイルだけがやけに沢山あって首を傾げてしまう。
そう言えば、洗面所下の収納に入っていた歯磨き粉の数も尋常じゃなかった。彼一人では一年かけても使い切れないのではないかと思うほどの量だ。
「そろそろ無くなりそうな気がして買ってくるんだけど、買ってこないといけないのは別のやつだったとかか」
どういう経緯でこの在庫量になったのかを聞いた時、川岸自身も首を傾げていた。毎回、朧げな記憶を頼りに買い足すからつい間違った物を買って来てしまうのだという。店の在庫数には細かいくせに、家のこととなると急に適当になる。仕事とプライベートの顔がまるで別人だ。他のスタッフはこんな気の緩んだオーナーのことを知らないのかと思うと、少しだけ優越感を覚える。
買い足しが必要だと思う物をメモしながら、穂香は夕飯の献立に頭を悩ませる。『セラーデ』に勤務してからもうすぐ3年にはなるが、オーナー自身のことはあまりよく知らない。食の好みが分からない人に料理を振舞うのは少し勇気が要る。ただ、こないだの飲み会では食べ物の好き嫌いは特に無いと答えていたのが救いだ。