残酷な初恋

高校時代

春、高校生活が始まった。僕は西村さんと同じ高校の普通科を受験し共に合格、進学した。この時の僕はまだ3年もあると考えていた。この間に西村さんに告白をしよう、と決めた。

入学式の前にクラス分けが発表された。残念、西村さんとは違うクラスだ。こればかりは仕方がない。廊下で会ったりしたら、中学の時みたいに声をかけて、会話をして関係を継続できるようにしようと考えていた。

入学式の翌日、いきなり西村さんと二人きりになれた。場所は高校の駐輪場である。高校は歩いていくには遠く、公共交通機関を使うとバスの乗り継ぎがあり面等であるため、自転車での通学であった。当然、同じ中学校出身の西村さんも同じ学区であるため、自転車通学であった。僕の自転車の真正面に西村さんの自転車があり、そこに西村さんが立っていた。
そして、周りには誰もいない。
これはいきなりのチャンスである。
告白は無理でも「一緒に帰ろ」と言えばよい。中学生活の中で、それぐらい言える関係であったはずだ。
でも、何も言えなかった。ただ、軽く会釈して一人で家に帰ってしまった。まだ時間がある、そう考えていた。

だけど、高校生活を振り返ると、これがラストチャンスであった。

僕の高校生活は、あまり思い出しくない思い出ばかりだ。高校の授業は、中学とは異なり、ひたすら黒板をノートに書き写すだけのものと感じた。僕だけかもしれないが授業に楽しさを感じなかった。友人関係の構築もうまくいかなかった。そのため、クラスの中では浮いた存在であった。僕の思い描いた高校生活と違う、だんだんそう感じていくのであった。

廊下で西村さんと会った際は会話することができた。西村さんとの会話が、高校生活の唯一の楽しみになっていった。
しかし、変化が起き始めた。実は僕から西村さんに声をかけることができなくなった。廊下で西村さんと会話する際は、いつも西村さんから声をかけてくれた。

廊下では告白は無理だ。他の生徒もいる。その前での告白は絶対できない。

中学時代以上に僕は西村さんを意識し、かつクラスで浮いた存在であることが僕の足かせになっていた。西村さんは、高校生になり見かける度にどんどん綺麗になっていった。中学時代は可愛い女の子であったのが、もう十分に綺麗で素敵な女性であった。
男子の会話の中で、どの女子が良い?とかの会話になった際、5人くらい上がる名前に必ず西村さんは入っていた。西村さんと同じ中学校出身ということで誇らしく思うのではなく、西村さんを誰かに奪われるのでは?と考えるようになっていった。
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