残酷な初恋
高校2年になると、僕なんかが西村さんに告白していいのかな?、そんな自問自答するようになった。いっそのこと、西村さんのことは諦めて、他の女子で好きな子を探せばよいのでは?と考えたりもした。確かにそうだ、そうしよう。と考えるが、簡単には見つからないものである。
また、僕のクラスに西村さんが頻繁に顔を出し、クラスの女子とよく会話をしていた。その頃から、僕と西村さんの会話が減っていった。

高校2年の2学期、僕の人生における【最大の事件】が起きた。この事件により僕の顔には一生消えない傷が出来た。そして高校生活最後の年、高校3年生になった。

高校での僕の成績は成績順の後ろから50番以内であった。西村さんは上位から50番以内であり、難関大学を狙う選抜クラスであった。授業による教室移動があると、西村さんは僕のクラスの前を通って移動する。それを眺めるのが、その時の僕の唯一の楽しみだった。この頃は、廊下で会っても西村さんと会話することはほとんどなかった。いや、皆無である。僕は寂しかった。

そして3学期になった。告白しようと決心したあの日から3年が過ぎようとしていた。いつしか西村さんへ告白することを諦めかけていた。

学校の帰り道、信号待ちしている西村さんに偶然会った。僕の自転車を西村さんの自転車の横につけ、そこで少しの時間、会話することが出来た。久しぶりの会話である。正直、何を話したのか覚えていない。何しろ頭の中が真っ白で、何とか会話を繋ぐのに必死だった。だけど、この出来事が僕の心に再度火を灯した。

そうだ、やっぱり告白しよう。僕は西村さんが好きだ。ダメかもしれないけど、この気持ちは伝えなきゃ。もう僕の頭の中は告白でいっぱいだ。

告白しようと、西村さんの家に電話した。当時は、まだスマートフォンや携帯電話がない時代である。連絡網に記載ある電話番号で各家庭に設置されている固定電話に連絡する。
西村さんが電話に出た。
「熊谷です。話があるんだ。会えないかな?」
「ごめん、大学受験もあるので今は無理。」
「そうだよね。ごめん、ごめん、またね。」
あっけない会話で電話は終わった。

僕は手紙を書くことにした。いわゆるラブレターだ。だけど、どう書けば良いのかわからない。電話での話と同様に、インターネットも無い時代である。誰かに聞くこともできない。取り急ぎ、レターセットを近くのコンビニで購入した。そこに僕の気持ちを綴った。たぶん、読んでもよく分からない文章だったと思う。陳腐な文章だけど、僕の好きだと言う気持ちがわかるように、伝わるように精一杯、ラブレターに思いを載せた。

ラブレターは、卒業式の数日前にポストに投函した。卒業式は何もなく終わった。当然、僕と西村さんは会話することもなく。僕は返信が届くまで、すごくソワソワしていた。
数日後、返信の手紙が届いた。
「お手紙ありがとう。お付き合いしている人がいるので、恋人にはなれません。本当にごめんなさい。西村志桜里」
僕の告白は、こんな顛末だった。

心が本当にえぐられた。心に本当にぽっかり穴が開くのが実感できた。またね、が実現することはなかった。
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