残酷な初恋

最大の事件

高校2年の2学期、僕は補導され警察沙汰になった。初めての取調室。これまでの人生の中で、真実は警察の取調室でしか喋っていない。両親にも先生にも、友達にもこの出来事は話していない。僕の顔に傷が残っているので、聞かれた際は決まって「自転車で転んで電信柱に顔からぶつかった。その衝撃で眼鏡のレンズが割れて顔に刺さった。」と嘘をついていた。

両親は警察から聞いていると思っている。また警察から高校に当然連絡もいっていると思うので、高校の先生達も何があったかは知っていると思う。この件で、僕は両親から先生から何も言われなかった。それはそれで助かった。

この頃の僕は、映画監督になるのが夢だった。始まりは小学6年生の時に見たタイムトラベルものの特撮映画だ。この映画を見てハリウッドで特撮映画の監督をしたいと思うようになった。高校生の僕はアルバイトし、そのお金で週末は映画を見に行く生活を繰り返していた。色んな映画を見た。有名な映画はもちろん、単館でしか上映されない映画など、映画館の場所を調べて、映画を見るのが楽しみであった。

ある日、同じクラスの高本君を誘って、少し離れた映画館に行った帰りである、工事中の道路で人けもなく、民家もない場所で最大の事件が起こった。
有り体に言えば、5,6人の不良に絡まれたのである。高本君は震えていた。僕は高本君を守ろうと抵抗をした。いわゆる喧嘩である。
喧嘩にはちょっとの自信はあった。僕の体は打たれ強く、僕のパンチは遅いが力があった。追い払うことが出来れば良いと考え、応戦した。

しかし、人数の差には勝てなかった。一人のパンチが僕の眼鏡の上から顔にヒットした。眼鏡のレンズが割れ、僕の顔に突き刺さる。痛みなどなかった。多分、アドレナリンが過度に出ていたのでしょう。まだ出来ると僕は身構えたが、相手は僕から去っていった。そして高本君は財布を取られた。

僕は友達を高本君を守れなかった。

その後、不良が居なくなったのを確認し、僕たちはその場から移動した。スマートフォンや携帯電話のない時代である。高本君は近くの民家に行き事情を説明し、救急車を呼んだ。状況を察した救急隊員はすぐに警察に連絡した。
僕は救急車に乗り、病院で治療を受けた。治療後はパトカーに乗り警察署に向かったのである。

そして、僕の顔、酷い有様になっていた。
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