天才外科医に娶られてママになりましたが、溺愛生活継続中です
不機嫌そうな相道さんの様子を伺いながら、私は当たり障りない言葉を彼女に投げ掛けた。

なんで私が気を遣わなきゃいけないのよ……。


「私があの患者さんの立場なら、同じように怒っちゃうかも。長い時間待たされてたわけだし」

「えぇー? 私はそんなことでキレたりしませんけどぉ」
「………」


ダメだ。これはもう話しにならない。


「とにかく。患者さんを怒らせるのはダメ。患者さんたちが受診してくれるから、私たちの仕事があるわけなんだから」


さっきよりも少し強めの口調でそう言うと、相道さんはあからさまに不機嫌そうな表情を浮かべた。

そして「はぁぁー……」と大きく溜め息を漏らした彼女は、ペットボトルのミネラルウォーターとスマホをバッグに放り込むと席を立つ。


「大澤さん、そんな堅苦しいこと言ってると男寄って来ませんよ?」


捨て台詞を投げ掛けて、私のことを鋭い目付きで睨んだ相道さんは、スタスタと外来を出て行ってしまう。

……なっ、なんて生意気な!
仕事の先輩に向かって、あんなこと言える? 最近の若者は、そういうこと言えるの?

それに私は……


「結婚してるし!」


男が寄って来ても来なくても、私には関係ない。

だって、翔くんと瑠愛がいる。そして、2人のおかげで毎日が幸せだから。

そんなことを考えながら、私も外科外来をあとにした。
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