イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。
No.18:私、場違いじゃない?
「なんか私、場違いじゃない?」
「全然そんなことないぞ」
「もうちょっと、かわいい格好してくればよかったかも。服とか持ってないけど……」
私は雰囲気に蹴落とされ、かなり凹んでいた。
「どうした? 月島らしくないぞ」
「そんなこと言ったって……」
「いつもの強くてガサツで暴力的な月島は、どこにいったんだ?」
「だ、誰がガサツで暴力的なのよ!」
彼はフッと、口元を緩めた。
「それでいいんだ。月島には月島の良さがある。もっと自信を持てよ」
「……」
我ながら単純だ。
宝生君が、励ましてくれた。
たったそれだけのことで、私は元気になれた。
「ありがと」
「それにその格好だって、悪くないぞ。清楚な月島に、似合ってる」
「えっ……」
「あとは体の凹凸をつけるだけだ」
「台無しだよ!」
冗談冗談と言ってくる彼の腕を、ポカポカ叩いてやった。
私の機嫌は、すっかりよくなっていた。
やっぱり私は、単純らしい。
「そういえば、映画のあと食事に行きたいんだが、一緒に来れるか?」
「うん、いいけど……ちゃんとワリカンにしてよ」
「いや、そうじゃない。ワンパターンだが、もらった食事券がある。そこは宝生グループの店でな。ちょっと視察も兼ねて行ってみたいんだよ」
「いやでも……」
「和食のファミレスで高級なところじゃないぞ。それに食事券を消費するだけだから、俺の財布からお金が出ていくわけじゃない。気にすることはない」
「ほんとに? じゃあ、お言葉に甘えていい?」
「もちろんだ。じゃあ予約しておく」
そういうと、スマホでメッセージを打ち始めた。
緑色の画面がチラッと見えたから、Limeだろう。
誰かに予約してもらうのかな。
しばらくすると、ラウンジ内にアナウンスが流れた。
ローファーム・イン・アメリカが、もうすぐ始まるらしい。
飲み物のグラスを持って、そのままラウンジを出た。
そのまま席まで、持って行ってもいいようだ。
グランドクラスは2階席の最前列にあった。
「なに、この椅子……」
私は驚いて、固まってしまった。
そこには一人がけの、巨大な革張りソファーがあった。
私ぐらいの体型だったら、横に2人座れそうな広さだ。
私と宝生君は、その席に横並びで座った。
二人の間には、十分の距離がある。
「横のボタンでシートを倒せるからな。あとフットレストも」
言われてシート横のボタンを押すと、フットレストもリクライニングも調整できた。
「これ、絶対寝るやつじゃないの?」
「はは、違いないな」
なんて快適な空間なんだ。
しかもスクリーンが真正面。
お金のある人達は、こんな贅沢ができるんだ。
「宝生君、いつもこんなシートで映画見てるの?」
「いや、そんなことはない。ていうか、そもそもあまり映画館には来ないぞ」
「そうなの?」
「ああ。大概自宅のシアタールームで見るんだ。映画って封切りが終わるとDVDが発売されるよな? そのテストバージョンのDVDを発売前に回してもらうことが多いんだよ。まあちょっと大きな声では言えないんだけどな」
うわー、それ更にチートなヤツじゃん。
「自宅のシアタールームって広いの?」
「そうでもないぞ」
「スクリーンってさ、どれぐらいの大きさ?」
「知らん。多分3メートルぐらいじゃないか?」
うわー、めちゃめちゃデカイじゃん。
うちのアパートの部屋全部あわせたより、そのシアタールームのほうが絶対広いと思う。
「食べ物ないけど、いいか?」
「いいよ、いらない。お昼食べてきたし」
「そうか。まあこの後夕食だしな」
そんな話をしていると、場内が暗くなった。
予告編が終わって、本編が始まる。
法律事務所内の会議から始まる。
予想通りだ。眠くなってきた。
昨日あまり寝られなかったから、無理もない。
映画も法律用語が多くて、あまり頭に入ってこない。
開始から15分ぐらいか。
それ以降の記憶が全くなくなった。
「全然そんなことないぞ」
「もうちょっと、かわいい格好してくればよかったかも。服とか持ってないけど……」
私は雰囲気に蹴落とされ、かなり凹んでいた。
「どうした? 月島らしくないぞ」
「そんなこと言ったって……」
「いつもの強くてガサツで暴力的な月島は、どこにいったんだ?」
「だ、誰がガサツで暴力的なのよ!」
彼はフッと、口元を緩めた。
「それでいいんだ。月島には月島の良さがある。もっと自信を持てよ」
「……」
我ながら単純だ。
宝生君が、励ましてくれた。
たったそれだけのことで、私は元気になれた。
「ありがと」
「それにその格好だって、悪くないぞ。清楚な月島に、似合ってる」
「えっ……」
「あとは体の凹凸をつけるだけだ」
「台無しだよ!」
冗談冗談と言ってくる彼の腕を、ポカポカ叩いてやった。
私の機嫌は、すっかりよくなっていた。
やっぱり私は、単純らしい。
「そういえば、映画のあと食事に行きたいんだが、一緒に来れるか?」
「うん、いいけど……ちゃんとワリカンにしてよ」
「いや、そうじゃない。ワンパターンだが、もらった食事券がある。そこは宝生グループの店でな。ちょっと視察も兼ねて行ってみたいんだよ」
「いやでも……」
「和食のファミレスで高級なところじゃないぞ。それに食事券を消費するだけだから、俺の財布からお金が出ていくわけじゃない。気にすることはない」
「ほんとに? じゃあ、お言葉に甘えていい?」
「もちろんだ。じゃあ予約しておく」
そういうと、スマホでメッセージを打ち始めた。
緑色の画面がチラッと見えたから、Limeだろう。
誰かに予約してもらうのかな。
しばらくすると、ラウンジ内にアナウンスが流れた。
ローファーム・イン・アメリカが、もうすぐ始まるらしい。
飲み物のグラスを持って、そのままラウンジを出た。
そのまま席まで、持って行ってもいいようだ。
グランドクラスは2階席の最前列にあった。
「なに、この椅子……」
私は驚いて、固まってしまった。
そこには一人がけの、巨大な革張りソファーがあった。
私ぐらいの体型だったら、横に2人座れそうな広さだ。
私と宝生君は、その席に横並びで座った。
二人の間には、十分の距離がある。
「横のボタンでシートを倒せるからな。あとフットレストも」
言われてシート横のボタンを押すと、フットレストもリクライニングも調整できた。
「これ、絶対寝るやつじゃないの?」
「はは、違いないな」
なんて快適な空間なんだ。
しかもスクリーンが真正面。
お金のある人達は、こんな贅沢ができるんだ。
「宝生君、いつもこんなシートで映画見てるの?」
「いや、そんなことはない。ていうか、そもそもあまり映画館には来ないぞ」
「そうなの?」
「ああ。大概自宅のシアタールームで見るんだ。映画って封切りが終わるとDVDが発売されるよな? そのテストバージョンのDVDを発売前に回してもらうことが多いんだよ。まあちょっと大きな声では言えないんだけどな」
うわー、それ更にチートなヤツじゃん。
「自宅のシアタールームって広いの?」
「そうでもないぞ」
「スクリーンってさ、どれぐらいの大きさ?」
「知らん。多分3メートルぐらいじゃないか?」
うわー、めちゃめちゃデカイじゃん。
うちのアパートの部屋全部あわせたより、そのシアタールームのほうが絶対広いと思う。
「食べ物ないけど、いいか?」
「いいよ、いらない。お昼食べてきたし」
「そうか。まあこの後夕食だしな」
そんな話をしていると、場内が暗くなった。
予告編が終わって、本編が始まる。
法律事務所内の会議から始まる。
予想通りだ。眠くなってきた。
昨日あまり寝られなかったから、無理もない。
映画も法律用語が多くて、あまり頭に入ってこない。
開始から15分ぐらいか。
それ以降の記憶が全くなくなった。