イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。
No.32:心配事
7月に入っても、今年は雨の多い日が続いた。
そしてそのお天気と同じように、私の心配事も一つ増えた。
家に送られてくる郵送物が増えてきた。
差出人は「~事務センター」とか、金融機関名が書かれているのもある。
これは父親が借金しているローン会社からの郵送物だ。
それだけならまだいい。
夕食の時間前後に、父親の携帯がたまに鳴るようになった。
どうやらローン会社からの連絡みたいだ。
携帯がなると、父親はキッチンの方へまわり小声で会話を始める。
しかし狭いアパートの中では、会話は丸聞こえだ。
「約束が違いますよね?」「なんとかしますから」
そんな会話が漏れ聞こえてくる。
「お父さん、お金返せてないの?」
さすがに私も心配になって、夕食中に聞いてみた。
「……ああ、ちょっと返済が滞ってしまってな……」
げんなりした様子で、お父さんはそう言った。
「去年の12月と先月のボーナスが、ほとんど出なくてね。その分当てにしていたのが、計算が狂ってしまったんだよ。ローン会社の2社は返済の変更に応じてくれたんだけどね。1社だけがどうしても応じてくれなくて……しつこく電話までしてくるもんだから、参っちゃうよ」
「私、少しならバイト代渡せるよ」
「大丈夫だよ。華恋には授業料もかかってないんだ。それだけで十分助かってる。お父さんがなんとかするから、心配しなくてもいいよ」
そう言って元気のない笑顔をみせる父親は、ちょっと痛々しかった。
本当に大丈夫かな……。
私は心配で仕方がなかった。
◆◆◆
サンゼリアで食事をしたあの日以降も、宝生君とは連絡を取り合っていた。
この間はマクドで食事をしながら、勉強を教えあった。
宝生君に数学の問題を質問してみたら、たちどころに解いてみせてくれた。
その説明が、もの凄くわかりやすい。
やっぱりもともと頭がいいんだな。
イケメンで頭までいいとか、神様はやっぱり不公平だ。
それから市立図書館の休憩室で、私が作ったフィナンシェを一緒に食べたりもした。
「おおっ、美味いなこれ」
「そう。よかった」
「この……独特の風味は、何が入ってる?」
「多分焦がしバターだと思うよ」
「そうなのか? えらく手が込んでるな」
「そうだよ。ありがたく味わってね」
「ああ」
テーブルの上には、缶コーヒーと紅茶のボトル。
いつもと同じように、宝生君はキャップを開けて私に手渡してくれた。
「月島はいつも料理を作ってるのか?」
「朝はまあ適当だし、お弁当は私がお父さんの分と両方作ってるよ。夕飯はね、先に家に帰ったほうが作ることになってる。だから私がバイトで遅く帰ると、お父さんが作ってくれてるんだ」
「凄いな。月島のお父さん、ちゃんと料理ができるんだな」
「料理って呼べるかな……焼きぞばだったり、チャーハンだったり。それも冷凍の」
「俺はなにもできないぞ」
「それは仕方ないでしょ? 必要ないんだから。私だって作る必要なかったら、作んないと思うよ」
こういうところに、私の宝生君との間の格差が現れる。
まあ私じゃなくったって、大概の人は彼との間に格差があるだろうけど。
「花火大会、天気が心配だな」
どうやら宝生君が気を使って、話題をかえてくれたようだ。
「それもそうだけど、暑くならないといいね」
「ああ、ビルの上は結構涼しいぞ。海からの風が気持ちいいと思う」
「へーそうなんだ。楽しみ」
例年になく、私は花火大会が楽しみになっていた。
浴衣じゃないにしても、何を着ていけばいいんだろう。
私の悩みは尽きなかった。
そしてそのお天気と同じように、私の心配事も一つ増えた。
家に送られてくる郵送物が増えてきた。
差出人は「~事務センター」とか、金融機関名が書かれているのもある。
これは父親が借金しているローン会社からの郵送物だ。
それだけならまだいい。
夕食の時間前後に、父親の携帯がたまに鳴るようになった。
どうやらローン会社からの連絡みたいだ。
携帯がなると、父親はキッチンの方へまわり小声で会話を始める。
しかし狭いアパートの中では、会話は丸聞こえだ。
「約束が違いますよね?」「なんとかしますから」
そんな会話が漏れ聞こえてくる。
「お父さん、お金返せてないの?」
さすがに私も心配になって、夕食中に聞いてみた。
「……ああ、ちょっと返済が滞ってしまってな……」
げんなりした様子で、お父さんはそう言った。
「去年の12月と先月のボーナスが、ほとんど出なくてね。その分当てにしていたのが、計算が狂ってしまったんだよ。ローン会社の2社は返済の変更に応じてくれたんだけどね。1社だけがどうしても応じてくれなくて……しつこく電話までしてくるもんだから、参っちゃうよ」
「私、少しならバイト代渡せるよ」
「大丈夫だよ。華恋には授業料もかかってないんだ。それだけで十分助かってる。お父さんがなんとかするから、心配しなくてもいいよ」
そう言って元気のない笑顔をみせる父親は、ちょっと痛々しかった。
本当に大丈夫かな……。
私は心配で仕方がなかった。
◆◆◆
サンゼリアで食事をしたあの日以降も、宝生君とは連絡を取り合っていた。
この間はマクドで食事をしながら、勉強を教えあった。
宝生君に数学の問題を質問してみたら、たちどころに解いてみせてくれた。
その説明が、もの凄くわかりやすい。
やっぱりもともと頭がいいんだな。
イケメンで頭までいいとか、神様はやっぱり不公平だ。
それから市立図書館の休憩室で、私が作ったフィナンシェを一緒に食べたりもした。
「おおっ、美味いなこれ」
「そう。よかった」
「この……独特の風味は、何が入ってる?」
「多分焦がしバターだと思うよ」
「そうなのか? えらく手が込んでるな」
「そうだよ。ありがたく味わってね」
「ああ」
テーブルの上には、缶コーヒーと紅茶のボトル。
いつもと同じように、宝生君はキャップを開けて私に手渡してくれた。
「月島はいつも料理を作ってるのか?」
「朝はまあ適当だし、お弁当は私がお父さんの分と両方作ってるよ。夕飯はね、先に家に帰ったほうが作ることになってる。だから私がバイトで遅く帰ると、お父さんが作ってくれてるんだ」
「凄いな。月島のお父さん、ちゃんと料理ができるんだな」
「料理って呼べるかな……焼きぞばだったり、チャーハンだったり。それも冷凍の」
「俺はなにもできないぞ」
「それは仕方ないでしょ? 必要ないんだから。私だって作る必要なかったら、作んないと思うよ」
こういうところに、私の宝生君との間の格差が現れる。
まあ私じゃなくったって、大概の人は彼との間に格差があるだろうけど。
「花火大会、天気が心配だな」
どうやら宝生君が気を使って、話題をかえてくれたようだ。
「それもそうだけど、暑くならないといいね」
「ああ、ビルの上は結構涼しいぞ。海からの風が気持ちいいと思う」
「へーそうなんだ。楽しみ」
例年になく、私は花火大会が楽しみになっていた。
浴衣じゃないにしても、何を着ていけばいいんだろう。
私の悩みは尽きなかった。