イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。
No.04:レアアイテム
「あったぞ。これ」
翌日の夕方、同じ図書館の同じ席。
勉強中の私の横から、低く優しげな声が聞こえた。
宝生君は手に2つ、お菓子の小箱を持っていた。
箱には「ウルトラソフト・キャラメル」の表記。
でも私がいつも食べている、茶色の小箱ではない。
「これって……」
「なんか味が違うみたいだな」
一つの箱には、「山梨ぶどう味」
もう一つには、「帯広ヨーグルト味」
そう書かれていた。
「な、なんでこんなレアアイテム、持ってんの?」
私は思わず聞いてしまった。
この2つは同じウルトラソフトでも、地域限定・期間限定の商品。
両方とも入手困難な、マニアには垂涎の一品だ。
「なんでって……倉庫部屋を漁ってたら、出てきたぞ。以前なんかもらったような記憶があったからな」
彼は何でもない事のように言った。
「食べてみよう。ちょっと休めるか?」
そう言って私を促す。
確かにここで喋りながら食べるというのはまずいだろう。
私たちは二人揃って、図書館の休憩エリアに向かった。
椅子とテーブルがいくつかあり、飲み物の自動販売機もある。
「何飲む?」
「え? べ、別にいらないけど……」
「遠慮するな。俺だけだと飲みづらい」
「そうなの? じゃあ、アイスティーで」
「このボトルのでいいのか?」
「うん」
彼はボトルのアイスティーと微糖の缶コーヒーを自販機で買った。
二人で椅子に座ると、彼が帯広ヨーグルト味の箱を開けて中から2個抜き出した。
そして1個を自分の分に取って、もう1個と残りの箱ごと全部私に差し出した。
「いらないの?」
「ああ。味見だけさせてくれ」
二人で包み紙を開けて、口にほおばる。
ヨーグルトの爽やかな酸味と甘みが、口いっぱいに広がった。
「あ、おいしい」
「お、美味いな」
二人の声が重なる。
私はちょっと恥ずかしくなった。
「飲むか?」
彼が紅茶のボトルを手にとって聞いた。
「え? う、うん」
そう答えると、彼はペットボトルのキャップをひねって開け、私に差し出してくれた。
「ほい」
「ありがと。お金出すね」
「いらないって、これぐらい」
「で、でも……」
「俺がのどが渇いただけで、ついでに買っただけだ。気にするな」
「そ、そう? じゃあ……ありがと。遠慮なくいただくね」
そう言って私は、宝生君からボトルを受け取る。
私はやけに喉が乾いてしまっていた。
ペットボトルから紅茶を2-3口、勢いよく流し込む。
「こういうの、よくもらったりするの?」
「ああ、この類のものは山ほどある。菓子類から文房具、ファミレスのクーポンやら映画のチケットやら、いろいろだな」
「へえー、やっぱり凄いんだね」
「ちっとも凄くなんかないぞ。やっぱり高校生だから、こういうのが好きなんだろうって思われてるんだろうな。知らない間にいろんなところから、山のように送られてくる」
彼はちょっとうんざりした表情でそう言った。
「大体は食べないし使わない。気がついたら期限切れっていうのが大半だ」
「えーなんで? 勿体ないでしょ?」
「勿体ないって言われてもな……」
羨ましい。
こっちは毎日の食費を切り詰めながら、生活してるっていうのに……。
まあそんなこと言ったって、彼には理解できないだろうけど。
それから彼は、2つ目の山梨ぶどう味の箱を開け、同じように1個だけ取って残りを私にくれた。
「んー、これもおいしい」
「おー、確かにぶどうだ」
フルーツ味のキャラメルなんて、できるんだな。
私は変に感心してしまった。
翌日の夕方、同じ図書館の同じ席。
勉強中の私の横から、低く優しげな声が聞こえた。
宝生君は手に2つ、お菓子の小箱を持っていた。
箱には「ウルトラソフト・キャラメル」の表記。
でも私がいつも食べている、茶色の小箱ではない。
「これって……」
「なんか味が違うみたいだな」
一つの箱には、「山梨ぶどう味」
もう一つには、「帯広ヨーグルト味」
そう書かれていた。
「な、なんでこんなレアアイテム、持ってんの?」
私は思わず聞いてしまった。
この2つは同じウルトラソフトでも、地域限定・期間限定の商品。
両方とも入手困難な、マニアには垂涎の一品だ。
「なんでって……倉庫部屋を漁ってたら、出てきたぞ。以前なんかもらったような記憶があったからな」
彼は何でもない事のように言った。
「食べてみよう。ちょっと休めるか?」
そう言って私を促す。
確かにここで喋りながら食べるというのはまずいだろう。
私たちは二人揃って、図書館の休憩エリアに向かった。
椅子とテーブルがいくつかあり、飲み物の自動販売機もある。
「何飲む?」
「え? べ、別にいらないけど……」
「遠慮するな。俺だけだと飲みづらい」
「そうなの? じゃあ、アイスティーで」
「このボトルのでいいのか?」
「うん」
彼はボトルのアイスティーと微糖の缶コーヒーを自販機で買った。
二人で椅子に座ると、彼が帯広ヨーグルト味の箱を開けて中から2個抜き出した。
そして1個を自分の分に取って、もう1個と残りの箱ごと全部私に差し出した。
「いらないの?」
「ああ。味見だけさせてくれ」
二人で包み紙を開けて、口にほおばる。
ヨーグルトの爽やかな酸味と甘みが、口いっぱいに広がった。
「あ、おいしい」
「お、美味いな」
二人の声が重なる。
私はちょっと恥ずかしくなった。
「飲むか?」
彼が紅茶のボトルを手にとって聞いた。
「え? う、うん」
そう答えると、彼はペットボトルのキャップをひねって開け、私に差し出してくれた。
「ほい」
「ありがと。お金出すね」
「いらないって、これぐらい」
「で、でも……」
「俺がのどが渇いただけで、ついでに買っただけだ。気にするな」
「そ、そう? じゃあ……ありがと。遠慮なくいただくね」
そう言って私は、宝生君からボトルを受け取る。
私はやけに喉が乾いてしまっていた。
ペットボトルから紅茶を2-3口、勢いよく流し込む。
「こういうの、よくもらったりするの?」
「ああ、この類のものは山ほどある。菓子類から文房具、ファミレスのクーポンやら映画のチケットやら、いろいろだな」
「へえー、やっぱり凄いんだね」
「ちっとも凄くなんかないぞ。やっぱり高校生だから、こういうのが好きなんだろうって思われてるんだろうな。知らない間にいろんなところから、山のように送られてくる」
彼はちょっとうんざりした表情でそう言った。
「大体は食べないし使わない。気がついたら期限切れっていうのが大半だ」
「えーなんで? 勿体ないでしょ?」
「勿体ないって言われてもな……」
羨ましい。
こっちは毎日の食費を切り詰めながら、生活してるっていうのに……。
まあそんなこと言ったって、彼には理解できないだろうけど。
それから彼は、2つ目の山梨ぶどう味の箱を開け、同じように1個だけ取って残りを私にくれた。
「んー、これもおいしい」
「おー、確かにぶどうだ」
フルーツ味のキャラメルなんて、できるんだな。
私は変に感心してしまった。