イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。
No.62:宣言
週明けの月曜日、私のクラスは朝からちょっとした騒ぎになった。
松葉杖をついたまま、宝生君が学校へ来たからだ。
私が病院へ行った土曜日、宝生君はそのまま入院した。
一応検査のための入院だったらしい。
そして何も問題なく、日曜日に退院した。
「大丈夫なの?」
「ああ、全く問題ない。しかしこの松葉杖ってヤツは、本当に鬱陶しいな。邪魔だし腕が疲れる」
「検査の結果、なんともなかったんだね」
「当然だ。頭も打ってないしな」
あのとき宝生君は、道路に倒れながら自分で運転手の西山さんに電話をしたそうだ。
宝生君にぶつけてしまった車の運転手が、一番パニックになっていたようだった。
運転手の西山さんも、電話口で救急車を呼びましょうと言ったらしい。
でも宝生君は大したことないからといって、西山さんの車で病院へ向かった。
なぜか柚葉も同乗して。
「柚葉もあのとき、めちゃくちゃびっくりしてたみたい」
「当然だろう。西山が来るまでは、ずっと泣いてたからな。でも病院へ着いた途端すっかり元気になって、『私と賭けをしてみない?』って満面の笑みで言ってきやがった。あいつ、頭の構造大丈夫か?」
「あー、柚葉はちょっとそういうところあるからね」
良くも悪くも、マイペースだ。
まあそこが魅力なのかもしれないけど。
隣の席で宝生君は少しあきれた表情をしたあと、松葉杖を使っておもむろに立ち上がる。
「それじゃあ行ってくる」
そう言って、そのまま一番後ろの席から教室の前の方に向かって歩き出した。
「ちょっと、宝生君? どこ行くの?」
松葉杖のカチャカチャという音を響かせながら歩いていく宝生君を、クラス全員が見守っていた。
そして宝生君は教卓の前に立つと、松葉杖で黒板をバンッと1回叩いた。
「みんな! 聞いてくれ!」
突然宝生君は、そう叫んだ。
教室中、一瞬にしてシーンとなった。
クラス全員、あっけに取られている。
「俺と月島華恋は、付き合うことになった!」
そう高らかに宣言した。
「ちょ、ちょっと……」
「これから俺たち2人を悪意を持って冷やかすことはしないでもらいたい! それから月島に対して悪意を持った嫌がらせや、精神的肉体的な攻撃を一切禁止する!」
教室内の空気が固まった。
「もしそれらが発覚した場合、俺はそいつが誰か絶対に突き止める! そして10倍の報復を返してやる! まともな学生生活は送れなくなると思え! 俺にはそれができる力がある!」
宝生君はある1点を見つめていた。
その視線の先には……美濃川さんがいた。
彼女は顔面蒼白になっていた。
「それから、俺がいま言ったこと。SNSで是非拡散してくれ。大々的にな。以上だ」
彼がそう言い終わると、クラス内のほぼ全員がスマホを取り出した。
うわー、これはすぐに拡散するわ……。
宝生君はまた松葉杖の音を鳴らしながら、自分の席に戻ってきた。
「あ、朝からいきなり何言い出すのよ」
「まああれだけ言っときゃ、大丈夫だろ」
まったく意に介していない。
「これで、後戻りできないぞ」
彼はニヤリと笑った。
「べ、別に、後戻りとかする気ないし」
「ならいいけどな」
そう言って彼はニヤリと、悪い笑顔を浮かべた。
私はびっくりしたけど……本当はちょっと嬉しかったんだ。
彼が隠さずに、公言してくれた。
私は顔の火照りがおさまるまで、しばらく時間がかかった。
松葉杖をついたまま、宝生君が学校へ来たからだ。
私が病院へ行った土曜日、宝生君はそのまま入院した。
一応検査のための入院だったらしい。
そして何も問題なく、日曜日に退院した。
「大丈夫なの?」
「ああ、全く問題ない。しかしこの松葉杖ってヤツは、本当に鬱陶しいな。邪魔だし腕が疲れる」
「検査の結果、なんともなかったんだね」
「当然だ。頭も打ってないしな」
あのとき宝生君は、道路に倒れながら自分で運転手の西山さんに電話をしたそうだ。
宝生君にぶつけてしまった車の運転手が、一番パニックになっていたようだった。
運転手の西山さんも、電話口で救急車を呼びましょうと言ったらしい。
でも宝生君は大したことないからといって、西山さんの車で病院へ向かった。
なぜか柚葉も同乗して。
「柚葉もあのとき、めちゃくちゃびっくりしてたみたい」
「当然だろう。西山が来るまでは、ずっと泣いてたからな。でも病院へ着いた途端すっかり元気になって、『私と賭けをしてみない?』って満面の笑みで言ってきやがった。あいつ、頭の構造大丈夫か?」
「あー、柚葉はちょっとそういうところあるからね」
良くも悪くも、マイペースだ。
まあそこが魅力なのかもしれないけど。
隣の席で宝生君は少しあきれた表情をしたあと、松葉杖を使っておもむろに立ち上がる。
「それじゃあ行ってくる」
そう言って、そのまま一番後ろの席から教室の前の方に向かって歩き出した。
「ちょっと、宝生君? どこ行くの?」
松葉杖のカチャカチャという音を響かせながら歩いていく宝生君を、クラス全員が見守っていた。
そして宝生君は教卓の前に立つと、松葉杖で黒板をバンッと1回叩いた。
「みんな! 聞いてくれ!」
突然宝生君は、そう叫んだ。
教室中、一瞬にしてシーンとなった。
クラス全員、あっけに取られている。
「俺と月島華恋は、付き合うことになった!」
そう高らかに宣言した。
「ちょ、ちょっと……」
「これから俺たち2人を悪意を持って冷やかすことはしないでもらいたい! それから月島に対して悪意を持った嫌がらせや、精神的肉体的な攻撃を一切禁止する!」
教室内の空気が固まった。
「もしそれらが発覚した場合、俺はそいつが誰か絶対に突き止める! そして10倍の報復を返してやる! まともな学生生活は送れなくなると思え! 俺にはそれができる力がある!」
宝生君はある1点を見つめていた。
その視線の先には……美濃川さんがいた。
彼女は顔面蒼白になっていた。
「それから、俺がいま言ったこと。SNSで是非拡散してくれ。大々的にな。以上だ」
彼がそう言い終わると、クラス内のほぼ全員がスマホを取り出した。
うわー、これはすぐに拡散するわ……。
宝生君はまた松葉杖の音を鳴らしながら、自分の席に戻ってきた。
「あ、朝からいきなり何言い出すのよ」
「まああれだけ言っときゃ、大丈夫だろ」
まったく意に介していない。
「これで、後戻りできないぞ」
彼はニヤリと笑った。
「べ、別に、後戻りとかする気ないし」
「ならいいけどな」
そう言って彼はニヤリと、悪い笑顔を浮かべた。
私はびっくりしたけど……本当はちょっと嬉しかったんだ。
彼が隠さずに、公言してくれた。
私は顔の火照りがおさまるまで、しばらく時間がかかった。