遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
「高野辺早智さんって、あなた?」

 休憩室でお昼ご飯を食べている時だった。突然、見知らぬお姉さま方の登場に、休憩室が騒然となる。
 この時ほど、自席でご飯を食べなくて良かった、と思ったことはない。

 急いで立ち上がり、両手を前で組む。

「はい。私です。何かご迷惑になることを――……」
「ふ~ん。大したことないわね。本当にこの子なの?」
「ちょっと髪型が違うけど、間違いないわ」
「えー、ショック。副社長ってこんなのがいいわけ?」

 副社長? どうしてここで、副社長の名前が出てくるの?

 けれどそんな質問など、聞ける雰囲気ではない。今の私はどうやら、お姉さま方に値踏みされているようだったからだ。

「あ、でも高野辺さんって新入社員でしょう?」
「は、はい」

 右も左も分からないペーペーです!

「ってことは、二十二歳?」
「はい。大卒で入らせていただきました」
「まさか副社長と同じ大学ってことはないわよね」
「何を言っているのよ。副社長は、アメリカの大学を飛び級で卒業したって話なんだから、あり得ないわ」

 と、飛び級……。お姉さま方の話っぷりからすると、どうやら副社長は私と同い年らしい。

「そしたら何? 年上には興味がないのかしら」
「タメ限定なら、無理ゲーじゃない」
「というか、そんな人いるの?」
「まぁ、対等な関係がいいって言う人間もいるから」
「ふ~ん。それでも、ねぇ?」

 こんな冴えない女の何処がいいの?

 そんな幻聴が聞こえてくるようだった。直接言われたわけでもないし、実際にそうだから、反論の余地はないけれど……。

 というか、圧が凄くて怖い!
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