遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
「ごめん。昨日、気持ち悪いと言って倒れたから、つい」

 そうだ。お姉さま方に狙われているのにも拘わらず、雪くんは私に接触してきたのだ。しかもそれを知った上で……。

 雪くんは知らないのだ。お姉さま方の恐ろしさを。わざわざ私と雪くんの関係を詮索し、且つ確認という牽制までしに来た人たちだ。次に何をしてくるか分からない。

 今までは高野辺家の人間ということで、他の女の子たちは手を出さずにいてくれていたけれど、この手の問題を知らない私ではない。

 咄嗟に、面倒事に巻き込まれると悟った私は、雪くんを拒絶した。それなのに……。

「どうして、私はここにいるの?」
「あんな状態で、高野辺家に帰すわけにもいかなかったんだよ。会社、というのもあるけど、僕も立場上……」
「っ! それなら尚更じゃない? ここが何処だか分からないけれど、何の連絡もなしに外泊したら」

 何て言われるか分からない。いや、下手したら会社を辞めさせられて、高野辺家の息のかかった勤め先に行かされるかもしれない。姉さんたちがそうだったように。

 それが嫌だから、自宅から通うことを条件に、外へ出たというのに……! 全て台無しになってしまう。

「大丈夫。高野辺家には、上手く言っておいたから」
「な、何て?」
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