遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
「ですが、それは早智さんの意思ではないでしょう。これでも幼なじみだと言える間柄です。早智はそんなことを望んでいない」
「望む望まないは関係ありません。それにこれは我が家の問題。口を出さないでちょうだい!」
「そうはいきません。僕は早智の恋人なんですから、彼女の意思を尊重します」
「尊重? 早智を勝手に営業課から秘書にしたのは貴方でしょう。どこが尊重しているの。貴方のやっていることは、私たちと何も変わらないわ」

 確かに、早智の母親の言う通りだった。普通でいたい早智なら、僕の秘書よりも、営業課を望んだだろう。

 でも僕は……嫌だった。営業課は男も多い職場。誰かに取られるわけにはいかないんだ!
 そのために僕は、ここまで上り詰めたのに……!

「そんなことはないよ、お母さん」
「早智……」

 奥に見える階段から、早智がゆっくりと降りてくる。どうやら、僕と母親の話を二階から聞いていたようだった。

 僕が呼びかけると、早智は優しい笑みを向けてくれた。
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