遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
 私は末っ子だから、お母さんたちの被害は薄かったけれど、姉さんたちは違う。特に一番上の姉は。

 幼い頃からどこに出かけるのも、門限も厳しく。
 遊びに出かける時は毎回、両親の説得から始まるから、いつしか出かけなくなり、幼い私の世話ばかりするようになった。

 そして、婿養子として家に入る者も、姉さんが決めたわけではない。両親が決めた相手だった。

 せめてもの救いは結婚後、別棟に建てた家に住んでいることだろうか。

 二番目の姉さんが嫁いでいった時は、やっぱり寂しそうだったけれど、「自由になって」とエールを送っていた。
 私にも、「早智もね。早くこの家から出られるといいね」と言えるほどの優しい姉さん。

 だから私は戦うよ。だって一人じゃないから。雪くんがいてくれるから、大丈夫。

「お母さんたちの中では、自分たちの言うことを聞く子が可愛いんでしょう? いい子なんでしょう? 私は悪い子なんだから、放っておいて」
「そんなわけないでしょう、早智」
「だったら、一度でもいいから私の意見を通してよ」
「……リバーブラッシュへの就職は許したでしょう」
「最終的に、周りの説得に応じただけじゃない」

 その周りの中に、私はいた? いたなら、そんな手間はなかったはずだよ。
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