遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
 私の言葉に、お母さんは何か言いたそうな顔をしていた。けれど雪くんの顔を見て、目を閉じる。

「お父さんには私が言っておくわ」
「っ!」
「でもね、早智。私たちの力が及ばないところに行ってしまったら、助けてあげることはできないのよ。何があっても」
「そのために僕は今の地位を得ました。今度は僕が早智を守るために」

 雪くんは靴を脱いで、私の方へと近づく。しかし、お母さんの目は鋭いままだった。

「それでも貴方は養子よ。実子じゃない。その意味は分かるわよね」
「はい。でも策はあります」
「勝算もなく早智を欲しているわけではない、ということ?」
「勿論です」

 二人は一体、何を言っているのか。何を心配しているのか。この時の私は分かっていなかった。

 一週間後、私が会社に戻る、その時まで……。
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