遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
 けれど考えてみれば、すぐに分かることだった。
 入社したての女性社員が、すぐに副社長付きの秘書に、だなんて、攻撃される格好の餌食であることを。

 それが嫌だったからあの時、私は雪くんを拒絶したのだ。けれど、私自身の問題が発生してしまったため、すっかり頭から抜け落ちていた。

 とはいえ、雪くんになかったことにしてくれ、とは言えない。だって、これは私が望んだことの代償なのだから。

「高野辺さん、いつになったら出来上がるの? こっちは貴女待ちなんだけど」
「すみません」
「それから、これミスしているからやり直して」
「はい。分かりました」
「これだから、嫌なのよね~」

 コネで入ったわけではないけれど、総務課にいるのは同じようなものだから、小楯さんたちお姉さま方の当たりが強かった。

 仕事内容から服装、ちょっとしたものでも難癖をつけてくる。

 けれど私は、弱音を言える立場ではなかった。ずっと私はこういう風にならないように守られてきたのだ。
 高野辺家の息のかかった会社に入る、ということはそういうことである。表立って私を攻撃することはできないようになっていた。

 しかし、リバーブラッシュは違う。いくら雪くんが副社長でも、今の社長は千春さまだ。

 たとえ私が雪くんの恋人だと知っていても、彼女たちは強気で出られるのだ。こんな強引な手を使った雪くんを千春さまが見過ごすはずはない、と。
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