遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
 「まぁ、確かに二十二歳ともなると……抵抗は出てくるよな」

 あぁ〜やっぱりそうだよね。折角の再会を台無しにしちゃったよ。

 「でも、相手は高野辺だし。いいよ。好きなように呼んで」
 「そんな、ダメよ。ここにいるってことは、勤め先か取引先が、このオフィス街のどこかにあるんでしょう。誰かが聞いたら、マズイんじゃないの?」

 こんな可愛い呼び名をネタにからかわれたら、どうするのよ。しかも原因が私だなんて嫌だし……責任なんて持てない。

 「……う〜ん。大丈夫。それくらいで変なことを言ってくるのはいない……わけじゃないけど、もう昔とは違うんだ。高野辺に助けてもらわなくても平気だから」
 「確かに。今の雪くんは、あの頃とは違ってしっかり者に見えるから」

 昔みたいに、いじめっ子にやられるとは思えなかった。あぁ言う奴らは基本、下だと思っている者を狙うから、こんなカッコいい人に手を出すことはない。

 どちらかというと、綺麗なお姉様方が放っておかないような印象を受けた。

 「それだけ?」
 「え?」
 「しっかり者以外にもあるんじゃないのか?」
 「ふふふっ。それ、自分で言うの?」

 すると、不貞腐れた顔になる雪くん。その顔を見ていると、何だか昔に戻ったような気分になった。

 そう、私はいつも、雪くんのそんな顔をよく見ていたからだ。
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