遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる

第13話 騒動は病室で

 目を開けると、見慣れない白い天井で、一瞬、ドキッとした。雪くんの部屋を思い出したからだ。
 あの時も今みたいに記憶が飛んでいたから仕方がない。

 それよりもここは何処なんだっけ? 何か色々な人に声をかけられたのは覚えている。
 確か「名前を言えますか?」「生年月日は?」とか。多分、白い恰好の人に……。

 しかも消毒液の匂いがした。ううん。ここも何だか同じような感じがする。

「早智!?」
「お、母さん?」

 どうしてここに、と言おうとしたら、今度はお父さんの姿も見えた。

「こらこら、早智は頭をぶつけたんだぞ。大きな声は控えなさい」
「そうでした。思わず……」

 あれだけ反抗した態度を取っていたのに、両親は家にいた時と変わらずに接してくれる。

 それだけで泣きそうになった。

 小楯さんたちに嫌がらせを受けても、これは私が選んだことだから、と自分に言い聞かせてきた。だから雪くんが傍にいても、弱音は吐かない。そう思っていたのに……。

 両親の顔を見て揺らぐなんて……なんて私は脆いんだろう。こんなに、弱かったのかな、私。
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