遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
「この度は、大事な娘さんをこのような目に遭わせてしまったこと、大変申し訳ありません」

 会長は病室に入って来たのと同時に、私の両親に頭を下げた。
 この時ばかりは安静と言っていた両親も、寝たままではいけないと思ったらしい。私の体を起こしてくれた。

「今後、このようなことが起きないためにも、警察にはきちんと調査してもらうつもりです。けれどその前に、倅から娘が関与している、とのことで本人に確認しました」
「それは警察に行く前のこと、ですよね」
「勿論です。事実確認も含めて聞いたところ、総務課の社員に言ったことを認めました」

 会長は言葉を濁したが、雪くんの顔を見る限り、ちゃんと内容を熟知しているようだった。そう、私に嫌がらせ行為をするよう命じた内容である。

「社長職をこのまま続けたいがために、辰則の恋人でもあり、我が社の社員でもあるお嬢様を蹴落とせれば何でもいい、と言ったそうです。辰則は千春との結婚を断り、社長の座に就く名目さえも、お嬢様との結婚だと言い張るくらい執着していましたから。お嬢様に何かあれば辰則に打撃を加えられると、安易に考えたんだそうです」
「ま、待ってください! それはどういうことですか?」

 私との結婚が社長になる名目? いくら何でもおかしいでしょう!?
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