遠くに行ってしまった幼なじみが副社長となって私を溺愛してくる
第3話 幼なじみの正体
「本当に久しぶりだよね。もう何年になるかな」
立ち話もなんだからと言われて、近くのカフェに私たちは入った。
洗練された店内に、立ち振る舞いがスマートな店員さん。窓が大きいからか、壁が黒なのにもかかわらず、温かな陽気に包まれていた。
二人だけなのだから、カウンターでも良さそうなのに、雪くんは迷わずボックス席へ。
思わず戸惑うと、すかさず「僕のおごりだから」とか「昔の話を誰かに聞かれたくはないから」と、私の逃げ道を塞ぐ。
孤児になって施設暮らしをしていた雪くんと、地元では力のある……有権者の娘の私。確かに他の者の耳に入れる話ではなかった。
「中学生になって雪くんが……遠くに行っちゃったから、ちょうど六年前かな」
本当は親戚の家に引き取られたのだ。私の家は、必要の有無など関係なしに、そういった情報が舞い込みやすい。
ただ雪くんが別の中学に行く、というだけでも喪失感が半端なかったのに、今度は遠くに行ってしまうことを聞いて私は……!
しかも雪くんの口からではなく、人づてに聞いてしまったのがまた、大きかった。
「いいよ。本人を目の前にして、わざわざ言葉を濁さなくたって」
「……でも、雪くんはあの時、何も言わずに行っちゃったじゃない? 言いたくなかったのかなと思って」
「それは……上手くいくかどうか、分からなかったんだ。施設からも、戻りたければ、いつでも戻ってきていいって言われていたから、余計に」
ということは、上手くいったってことだ。
立ち話もなんだからと言われて、近くのカフェに私たちは入った。
洗練された店内に、立ち振る舞いがスマートな店員さん。窓が大きいからか、壁が黒なのにもかかわらず、温かな陽気に包まれていた。
二人だけなのだから、カウンターでも良さそうなのに、雪くんは迷わずボックス席へ。
思わず戸惑うと、すかさず「僕のおごりだから」とか「昔の話を誰かに聞かれたくはないから」と、私の逃げ道を塞ぐ。
孤児になって施設暮らしをしていた雪くんと、地元では力のある……有権者の娘の私。確かに他の者の耳に入れる話ではなかった。
「中学生になって雪くんが……遠くに行っちゃったから、ちょうど六年前かな」
本当は親戚の家に引き取られたのだ。私の家は、必要の有無など関係なしに、そういった情報が舞い込みやすい。
ただ雪くんが別の中学に行く、というだけでも喪失感が半端なかったのに、今度は遠くに行ってしまうことを聞いて私は……!
しかも雪くんの口からではなく、人づてに聞いてしまったのがまた、大きかった。
「いいよ。本人を目の前にして、わざわざ言葉を濁さなくたって」
「……でも、雪くんはあの時、何も言わずに行っちゃったじゃない? 言いたくなかったのかなと思って」
「それは……上手くいくかどうか、分からなかったんだ。施設からも、戻りたければ、いつでも戻ってきていいって言われていたから、余計に」
ということは、上手くいったってことだ。