玉の緒と可愛いあの子
(あの男より、私の方がこの子の近くにいられるのに)
熱のこもった紫の目を見つめながら、小町は思う。紫のその目は別の人に向けられている。そのことに傷付きながらも、その瞳を美しいと思う気持ちもあった。
そうしている間に時間は過ぎ、二人は高校三年生になった。自分の進路を決める大切な時期である。小町と紫は志望する大学は違えど同じ受験生のため、放課後残って勉強を教え合うことが多くなった。
受験が目前に近付いた頃、いつものように勉強をしていた時だった。紫が勉強する手を止めた。その目は真剣に小町を見つめている。それに胸を高鳴らせつつ、「手が止まってる」と言った。
「わかってる。でも、ちゃんと宣言しておこうと思って」
「宣言?」
「私、阿部くんのことが好き」
わかっていたはずの答えだった。しかし、小町は泣きたくなってしまう。それをグッと必死に堪えていた。
「私、この受験が終わったら阿部くんに告白する」
「……そう。応援してる。あんたの受験も恋も」
熱のこもった紫の目を見つめながら、小町は思う。紫のその目は別の人に向けられている。そのことに傷付きながらも、その瞳を美しいと思う気持ちもあった。
そうしている間に時間は過ぎ、二人は高校三年生になった。自分の進路を決める大切な時期である。小町と紫は志望する大学は違えど同じ受験生のため、放課後残って勉強を教え合うことが多くなった。
受験が目前に近付いた頃、いつものように勉強をしていた時だった。紫が勉強する手を止めた。その目は真剣に小町を見つめている。それに胸を高鳴らせつつ、「手が止まってる」と言った。
「わかってる。でも、ちゃんと宣言しておこうと思って」
「宣言?」
「私、阿部くんのことが好き」
わかっていたはずの答えだった。しかし、小町は泣きたくなってしまう。それをグッと必死に堪えていた。
「私、この受験が終わったら阿部くんに告白する」
「……そう。応援してる。あんたの受験も恋も」