お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
「視力も変わらずですね。では引き続き同じものを使ってくださいね」

「はい」

私の診察はすぐに終わり、あとは工藤くんにつき添って様子を見守った。

「診察の結果、コンタクトを使用しても問題ないとのことでした。早速試してみましょうか。どのようなレンズをご希望ですか?」

白衣のお姉さんにレンズのパンフレットを広げられて、工藤くんは、うーんと悩む。

「樋口はどれ使ってるの?」

「私はこれ。2週間の使い捨てで、ドライアイになりにくいタイプのもの」

「あ、それいいな。俺も勉強してると目が乾くから。じゃあ、俺もこれにします」

かしこまりました、とお姉さんは笑顔でテキパキと準備をする。

「では早速レンズを入れてみますね。まっすぐ前を見ていてください。はい、右目入りましたよ」

「え、うわっ!」

工藤くんは遠くを見て驚きの声を上げる。

「すごっ、よく見える」

「では左目も入れますね。はい、どうですか?」

くるりと後ろを振り返り、部屋を見渡して工藤くんは感動している。

「世界が、世界が変わった…」

「あはは!工藤くん、なんか生まれ変わったみたいな口ぶりだね」

「ああ、まさにそんな気分。なんて快適なんだ。ちっとも痛くないし。俺、小学校3年生の頃から眼鏡だったから、眼鏡なしでこんなふうに見えるなんて、もう感激しかない」

工藤くんがこんなに饒舌になるなんて、と驚いていると、ふと工藤くんが私を見た。

「樋口って、こんな顔だったんだな。ぼんやりとしか見えてなかった」

「え?工藤くん、眼鏡の度が合ってなかったの?」

「そうみたい。もう3年も同じもの使ってたからな」

「やだ!ふふふ、工藤くんって完璧なイメージなのに」

思わず笑ってから、私は急に工藤くんに見とれて口をつぐむ。

(工藤くん、眼鏡かけてないとこんな顔なんだ。目がスッと切れ長で、なんか、なんて言うか…)

かっこ、いい?

次の瞬間ハッとして、頭の中に浮かんだ言葉を振り払った。
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