お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
7月に入ると学期末テストがあり、いつものごとく工藤くんが学年トップ、私は2位になった。

夏休み前の個人面談で、先生は私の成績表を見ながら話し出す。

「樋口は成績も安定してるし、指定校推薦も優先して選べるぞ。どこにするか決めたか?」

「それなんですが、先生。私、指定校推薦はやめようと思います。一般受験するつもりです」

「そうなの?」

先生は拍子抜けしたような声を出す。

「それは、志望校が変わったってこと?指定校推薦のない大学にしたのか?」

「志望校はまだ決めていませんが、ひとまず指定校推薦の中から選ぶという考えはやめました。自分が本当に学びたいこと、本当に行きたい大学をじっくり選んで決めたいと思います」

そう言うと先生は、ほう…としばらく間を置いてから、手にした書類をめくり始めた。

「なるほど。工藤の影響か…」

「え?」

「いや、お前達の活動報告レポート読んでてさ、色々俺も感じることがあったんだ。書かれた内容は真面目だけど、文章の合間に心の機微が見え隠れする。いやー、俺いい年のおっさんなのに、なんか胸がキュンキュンしてさ。いいよな、この活動。うちの学校の生徒って真面目だから、政府のハチャメチャなこの政策にもきちんと真面目に取り組んでくれてる。それがもう、なんかおっさんのハートを鷲掴みするほど純粋で可愛くてさ。これぞ青春!って感じ。いい時間を過ごしてるんだろうなって」

「は、はあ…」

としか言いようがない。

結局私の志望校についてではなく、先生はいかにこの活動が良いかを熱弁して面談は終わった。
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