お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
「あ、花火!」
その場にいる人達が一斉に空を見上げる。
「わぁ、きれい…」
次々と空を彩る花火に、私はうっとりと見とれる。
カラフルにキラキラと輝きながら、夜空に咲く花。
それは日常生活のマンネリやモヤモヤした気持ちを忘れさせてくれる、美しい光景だった。
「あ、にっこりマーク!すごーい、どうやって作るんだろうね?」
「確かに。職人技だな」
時折、可愛いキャラクターやハートマークも織り交ぜられ、見ていて飽きない。
ラストは圧巻の大輪の花がたたみかけるように咲き、周囲から感嘆の声が上がった。
「きれい…」
思わず呟いてから、隣にいる工藤くんに微笑みかける。
工藤くんも優しく笑い返してくれた。
「すごく素敵だった。工藤くん、今夜は誘ってくれてありがとう」
「こちらこそ。いい気分転換になったよ」
「うん、私も。高校3年生の楽しい思い出ができて良かった。受験勉強一色の年になるところだったもん」
「そうだな」
混雑を避けて、私達はしばらくその場でおしゃべりしてから、ゆっくりと駅へ向かう。
来る時は見る余裕がなかった通り沿いの屋台を覗きながら歩いていると、ふと、可愛らしい風鈴のアクセサリーが目についた。
「ん?何かいいのあった?」
工藤くんが立ち止まって尋ねる。
「あ、うん。この風鈴、可愛いなと思って」
「ほんとだ。小さいのによくできてる」
ピアスやかんざし、帯飾りなど、小さいながらも本格的な風鈴は、色々な模様と色があって全てが一点物のようだった。
私は小さなイヤリングを手に取った。
少し揺らすとかすかにチリンと音がする。
「それ、可愛いでしょ?彼にプレゼントしてもらったら?」
「え?いや、そんな」
店員のお姉さんに言われて、私は慌ててイヤリングを店頭に戻した。
するとすぐあとに工藤くんが手に取る。
「じゃあ、これください」
あら、優しい彼氏ねーと、お姉さんは笑って受け取る。
「え、ちょっと、工藤くん!これは補助金下りないよ?」
そう言って止めるけれど、工藤くんは涼しい顔で支払いを済ませた。
「彼女、せっかくだから着けていったら?」
お姉さんは私に近づくと、イヤリングを耳に着けてくれる。
「あら、可愛い!ね?お兄さん」
「うん。よく似合ってる」
工藤くんに見つめられ、私はドギマギと視線を落としてお礼を言う。
「あの、どうもありがとう」
「どういたしまして。じゃあ行こうか」
さり気なくまた手を繋いで工藤くんは歩き出す。
耳元で時折チリンと聞こえるイヤリングに、私はなんだかとても幸せな気分になった。
帰りも各駅停車の電車に乗り、最寄り駅で降りると、工藤くんはそのまま私を家まで送り届けてくれた。
一人で帰れるから大丈夫と断っても、ダメだ、と言って手を離してくれない。
駅から10分歩いて自宅の前まで来ると、私は改めて頭を下げた。
「工藤くん、今夜は本当にありがとう。このイヤリングも、大切にするね」
「こちらこそ、つき合ってくれてありがとう。また連絡する」
「うん。気をつけて帰ってね」
「ああ。おやすみ」
「おやすみなさい」
工藤くんは小さく頷いて駅への道を戻って行く。
私はその後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
その場にいる人達が一斉に空を見上げる。
「わぁ、きれい…」
次々と空を彩る花火に、私はうっとりと見とれる。
カラフルにキラキラと輝きながら、夜空に咲く花。
それは日常生活のマンネリやモヤモヤした気持ちを忘れさせてくれる、美しい光景だった。
「あ、にっこりマーク!すごーい、どうやって作るんだろうね?」
「確かに。職人技だな」
時折、可愛いキャラクターやハートマークも織り交ぜられ、見ていて飽きない。
ラストは圧巻の大輪の花がたたみかけるように咲き、周囲から感嘆の声が上がった。
「きれい…」
思わず呟いてから、隣にいる工藤くんに微笑みかける。
工藤くんも優しく笑い返してくれた。
「すごく素敵だった。工藤くん、今夜は誘ってくれてありがとう」
「こちらこそ。いい気分転換になったよ」
「うん、私も。高校3年生の楽しい思い出ができて良かった。受験勉強一色の年になるところだったもん」
「そうだな」
混雑を避けて、私達はしばらくその場でおしゃべりしてから、ゆっくりと駅へ向かう。
来る時は見る余裕がなかった通り沿いの屋台を覗きながら歩いていると、ふと、可愛らしい風鈴のアクセサリーが目についた。
「ん?何かいいのあった?」
工藤くんが立ち止まって尋ねる。
「あ、うん。この風鈴、可愛いなと思って」
「ほんとだ。小さいのによくできてる」
ピアスやかんざし、帯飾りなど、小さいながらも本格的な風鈴は、色々な模様と色があって全てが一点物のようだった。
私は小さなイヤリングを手に取った。
少し揺らすとかすかにチリンと音がする。
「それ、可愛いでしょ?彼にプレゼントしてもらったら?」
「え?いや、そんな」
店員のお姉さんに言われて、私は慌ててイヤリングを店頭に戻した。
するとすぐあとに工藤くんが手に取る。
「じゃあ、これください」
あら、優しい彼氏ねーと、お姉さんは笑って受け取る。
「え、ちょっと、工藤くん!これは補助金下りないよ?」
そう言って止めるけれど、工藤くんは涼しい顔で支払いを済ませた。
「彼女、せっかくだから着けていったら?」
お姉さんは私に近づくと、イヤリングを耳に着けてくれる。
「あら、可愛い!ね?お兄さん」
「うん。よく似合ってる」
工藤くんに見つめられ、私はドギマギと視線を落としてお礼を言う。
「あの、どうもありがとう」
「どういたしまして。じゃあ行こうか」
さり気なくまた手を繋いで工藤くんは歩き出す。
耳元で時折チリンと聞こえるイヤリングに、私はなんだかとても幸せな気分になった。
帰りも各駅停車の電車に乗り、最寄り駅で降りると、工藤くんはそのまま私を家まで送り届けてくれた。
一人で帰れるから大丈夫と断っても、ダメだ、と言って手を離してくれない。
駅から10分歩いて自宅の前まで来ると、私は改めて頭を下げた。
「工藤くん、今夜は本当にありがとう。このイヤリングも、大切にするね」
「こちらこそ、つき合ってくれてありがとう。また連絡する」
「うん。気をつけて帰ってね」
「ああ。おやすみ」
「おやすみなさい」
工藤くんは小さく頷いて駅への道を戻って行く。
私はその後ろ姿が見えなくなるまで見送った。