お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
第七章 いつの間にかこんなにも
夏休みが終わり、新学期が始まった。

「樋口さん、おはよう!久しぶり」

「おはよう。沢田さん、髪ばっさり切ったんだね」

「うん。ちょっと気分転換にね」

「そうなんだ。似合ってて可愛い」

「そう?ありがとう」

席に座って沢田さんと話していると、後ろの笠原くんがやって来て机にカバンを置く。

「おはよう、樋口」

「おはよう、笠原くん」

挨拶してから、私は、ん?と首をひねる。

(あれ?笠原くんと沢田さん、ホワワーンとしてない)

そう思いながら二人のカバンを見て、あ!と思わず声を上げる。

「どうしたの?」

沢田さんに聞かれて、「ううん、何でもない」と咄嗟に答えた。

(二人のスクバ、お揃いのマスコットがなくなってる。それってつまり、別れたってこと?)

髪をばっさり切って気分転換したのも、きっとそういうことなのだろう。

(そっか、そうだよね。つき合ってしばらく経ったら別れるカップルも出てくるよね)

先生の話では、お試しデートの課外活動は、もし別れてしまったらそのあとは無理に新しい相手を探さなくても良いということだった。

つき合った期間の長さやレポートの枚数は成績には響かないから、と。

(ってことは、もう活動を終えた人達も何人かいるってことか)

沢田さんと笠原くんは、何事もなかったかのように顔も合わせない。

その日は始業式のあと席替えをして、私も沢田さんも笠原くんも、離ればなれになった。
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