お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
「じゃあ気をつけて行ってらっしゃい。浮かれて階段踏み外さないようにね」

苦笑いしながら見送ってくれるお母さんに、はーい!行ってきますと返事をして、私は玄関を出た。

電車に揺られてキャンパスに向かうと、同じようにスーツ姿の学生が増えてきた。

(去年、工藤くんにつき添ってもらって、一緒にオープンキャンパスに来たなぁ。なんだか遠い昔のことのような気がする)

私の大学に、工藤くんも来たことがある。
それが妙に嬉しかった。

大きな講堂に集まって入学式を終えると、校門前の芝生広場では、早速部活やサークルの勧誘が始まっていた。

「かーのじょ!軽音に興味ない?楽しいよー」

「ラクロス部でーす!一緒に青春しませんかー?」

「可愛いお姉さん!チアリーディングはどう?」

私はもみくちゃにされながら、たくさんのチラシを手に握らされる。

なんとか校門から出ると、チラシをカバンにしまい、乱れた髪を手ぐしで整えた。

(やだー、これから工藤くんに会うのに。スーツもしわしわ)

しょんぼりするけれど、工藤くんに会える嬉しさの方が勝る。

スマートフォンを取り出して、
『入学式終わったよ。これから向かうね』
とメッセージを送ると、
『待ってるから。気をつけておいで』
と、すぐに返信が来た。

私はふふっと笑みをこぼしてから、駅への道を急いだ。
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