お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
その頃、テレビでは『お試しデート』についてのコーナーが続いていた。

「えー、ここからはスタジオにゲストの方をお招きしてお話をうかがってまいります。10年前、政府のこの政策を取り入れた学校で教師をしていらっしゃった鷲尾 道彦先生です。鷲尾先生、どうぞよろしくお願いいたします」

「はい、よろしくお願いいたします」

「えー、鷲尾先生はこの政策が始まった年に、政府の指定によりご自分の学校の生徒さん達に取り組んでもらった訳ですが、当時を振り返ってみていかがですか?」

「それはもう、我々教員は大いに戸惑いましたよ。ですが、うちの生徒達は真面目でいい子ばかりでしてね。このトンチンカンに思えた政策にも、真剣に取り組んでくれたんです。きちんと活動内容もレポート用紙にまとめて提出してくれましてね。これがもう、読んでみると胸キュンでして」

「は?胸キュン、ですか?」

「そう!純情な生徒達が初めてデートするドキドキ感が、手に取るように伝わってきましてね。初めはぎこちなく、当たり障りない会話しかしなかったのに、段々お互いに心を通わせていくんですよ。いわゆる進学校の生徒達ですから、勉強一筋で恋愛なんて興味がない。ましてや告白なんて、するつもりもない。そんな彼らがこの『お試しデート』で恋人達の気持ちを知っていく。いやー、この政策、なかなか良かったですよ。なんたってうちの生徒、これがきっかけで実際につき合い始めて、遂にはゴールインしましたからね」

「え?それは、結婚されたということですか?」

「そうなんですよ。お見合い結婚ならぬ、お試しデート婚!いいでしょ?しかももうすぐ赤ちゃんも生まれるんです。お試しデート婚ベビー!いやー、めでたい!あはは!」

鷲尾先生が全国ネットでこんなにも浮かれ、こっ恥ずかしい発言をしているとは露知らず…

私は産婦人科の診察室で、
「工藤先生、今日もメロメロパパですねー」
と看護師さんに冷やかされ、苦笑いを浮かべていたのでした。

♡おしまい♡
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