【超短編】その日から優しい雨の日には必ず水瀬くんの笑顔を思い出すようになった。
雪白(ゆきしろ)くんと陽向(ひなた)くんが初めて手を繋いだところまで読んだよ!」

 どの場面かすぐに分かってくれると思ったから、水瀬くんに読んだシーンを伝えた。

「あの場面、強引に手を繋いだから雪白くんに嫌われちゃったのかな?って陽向くんは思ってたけど、雪白くん照れたから視線をそらしたのにね」

「そうそう、じれじれ感がすごいよね。でもそれがすごく好き!」

「僕も! この漫画貸す? アプリの漫画より更に加筆修正されてて、胸きゅんシーン増えてるよ!」

「そうなの? 読みたい!」

「じゃあ、2巻までは明日持ってくるね。この3巻は今から読むから読み終わったら貸す、で大丈夫かな?」

「ありがとう。っていうか、今教室で読むんだ?」

「うん。今日はカフェのバイト休みだし、家に帰ると妹たちと遊ぶので忙しくなるし。ここで読むとすごく集中できるんだ」

 今まで何も知らなかった水瀬くんの情報を今、一気にいくつも知った。そして無口だと思っていたけど、こんなにいっぱい話をする人だったんだ。

 近くにいるのに、遠くの別世界にいるように感じていた水瀬くん。ふたりの距離が縮まった気がした。

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