神様の恋まじない
神社を出て、自転車を押しながら亮と並んで歩く。
タイヤが回る音と二人分の足音だけが、真っ暗な中に響く。
気持ち程度にある街頭が薄気味悪く道を照らして、わたしたちの陰を細く伸ばしていた。
来た時には怖かった道も、亮がいれば怖くない。
それどころか、亮の隣りを歩いているっていう事実が、わたしをどうしようもなくどきどきさせた。
……ばかみたい、ほんとうに、ばかみたい。
この期に及んでどきどきしちゃう自分の心臓がうらめしい。
「……どうしてわかったの? わたしがあそこにいるって」
関わらないでと言ったばかりなのに。
黙ったまま歩く亮に、そうたずねる。
こんな遅い時間に、どうして来たのだろう。
それに、恋まじないのこと、亮は知っていたの……?
あれだけのことを亮に言ったくせに、いざこうして亮に会うとほっとする。
いがいがの心がまあるくなったみたいに、わたしはいま亮が隣りにいることに安心してしまっている。
わたしを楽しくさせるのも、悲しくさせるのも、ぜんぶ亮だ……。