神様の恋まじない

「迷信の通り十二時ぴったりにお参りした。夢に神様が出てきたのは覚えてる。なにかお願いをされて、それを叶えてやったのも覚えてる」

 いまではその時のことを思い出すと身震いするくらい、ほんとうは怖いことだったと思える。

 神様、と言えば聞こえはいいけれど、本当は神様なんかじゃないっていまでは思ってる。

 怖がらせるつもりはないから、まりかには言わないけど。

「だけど神様の顔も、俺は何を叶えてやったのかも、それだけはずっと思い出せなかった。そのあとに、また夢をみた。ぼんやりした輪郭でしか識別できないような神様ってのが、願いを三つ叶えるって、俺に言ってきた」

「……夢、とかじゃなくて?」

 まりかの不安げな声に、ゆっくりと首をふった。

「……俺も最初はそう思ったよ。けど、本当に、本物なんだ」

 それが本物だと気付き始めたのは、本当に最近のこと。

 確信を得るまでにかなり時間がかかったけど……。

「どうして亮は、これをやろうと思ったの……?」

 まりかは不安げな顔で俺にたずねた。

 俺を見つめる瞳が揺れている。

 ……最近こんな顔をさせてばっかりだ。

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