神様の恋まじない

 梨木陽菜とはそれで終わるはずだった。

 ……だけど、梨木の次の言葉で肝が冷えたんだ。

「あれー……、おかしいな。神様の恋まじないしたのに」

 やっぱり迷信なのかなと付け足されたその声に、思わず反応してしまった。

「おまえもやったのか……?」

 思わず前のめりで梨木にそう聞いた。

 梨木は俺の話に食いついてきた。

「『も』ってことは、先輩もやったことがあるんですね?」

 そんな梨木の言葉をかわぎりに、そこからはあっという間に話が進んだと思う。

 天真爛漫な梨木は、幼かったころのまりかに似ていると思った。

 それで、いらないことまで話したんだ。

 まりかのことが好きなこと。

 恋まじないで奪われたのは、まりかと付き合えるはずだった未来だったかもしれないこと。

 それを聞いた梨木は俺に言ったんだ。

 「まりかさんのことを好きでいていいです。忘れるために、私と付き合ってみませんか?」って。



――――――――


――――――――――――――――――




< 135 / 146 >

この作品をシェア

pagetop