神様の恋まじない

「……うん。たしかにわたし、亮の名前を書いてたよ。……勇気がなくて、ちいさくうすく文字を書いて。……それを折れる限界までひたすら折って渡したんだもん」

 そのせいで書いた文字が見えなくなっちゃったけどと、まりかは悲し気に目を伏せた。

 ……やっぱりそうだったんだ。

「俺、思ったんだ。俺の願いって、まりかの好きな人が俺であるように。ずっとまりかの近くにいられるように。まりかと両想いになれるように。この三つだった。……このとき、俺にとって一番大切だったのはなにか、って」

 奪われるものがもしほかにあるのなら何だろうって、たくさん考えた。

 最初は、神様に奪われた俺にとって大切なものは、『まりかと付き合えたはずの未来』だと思ってた。

 あの日、願いは全部叶ってたはずなのに、まりかから答えをもらえなかったから。

 俺の一方通行な思いだと諦めて、今日になった。

 最近まで、勝手にそうだって思い込んでた。


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