神様の恋まじない
「……なに話してたの」
「え……?」
「いや、困ってるみたいだったから」
声をかけられたことに驚いて亮の方をじっと見る。
黒い瞳がまっすぐこっちを見ていて、どきっと胸が高鳴った。
最近こんなふうに視線を合わせることなんてなかったから、余計緊張する。
……でも、そっか。
わたしが困っていると思って、亮はわざと割って入ってくれたんだ。
亮の些細な優しさに気が付いて、今度は胸がじんわりと温かくなっていく。
その優しさがうれしいのに、なぜだか悲しくなるんだ。
「……なんでもないよ」
「……あっそ」
こんな短い会話でも、ほんとうは飛び上がりたいくらいうれしいのに。
すぐにそっぽを向いてしまった亮の後ろ頭を見て、こんなに近くにいるのに遠いなって、改めて思った。