神様の恋まじない

 陽菜ちゃんは一歩、また一歩とわたしが遠ざかった分だけ近づいてくる。

 なぜだか、すごくこわい……。

 わたしの目の前で、陽菜ちゃんはぴたっと立ち止まった。

 わたしより全然背が低いはずなのに、異様な圧を感じてしまう。

「……まりかさん。私はずっと、あなたがうとましくて仕方なかった」

「え……?」

 突然放たれた氷の刃のような拒絶の言葉。

 陽菜ちゃんとは思えないほど低い声に、理解が追い付かない。

 あんなに慕っていてくれたと思ってたのに。

 ……全部、嘘だった?

 いままで見てきた陽菜ちゃんとはまるで違う様子に、動揺が隠せなかった。

「私、知ってましたよ? まりかさんが亮せんぱいを好きなこと」

「……っ!」

 ……わたしの亮への気持ちは、外から見たらばればれだった?

 普段一緒にいることのない陽菜ちゃんにまで、わかっちゃうくらい?

 でも、そんなこと、どうでもいい。

 いまはただ、陽菜ちゃんがこわい——!

「だって、ずっと見てましたもん。かっこいい先輩がいるなーって。だけどいつも必ず一緒にいる女の人がいるなーって」

 放たれる言葉のひとつひとつが重くて、痛い。

 そして、まるでとどめと言わんばかりに、陽菜ちゃんはわたしを見上げて、はっきりと言った。

「邪魔だな、って」


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