神様の恋まじない
◇たったひとつの後悔◇
「好きな人いる?」
小学校六年生のときの、理科の実験中。
その日は爽やかな風が吹き抜ける、夏の日だった。
同じ班だったきみが授業のノートをとりながら、唐突にそう言ったのは。
きみの髪にかかる太陽の日差しがまぶしくて、ぼーっと見ていたわたしにとって、それは青天の霹靂のような質問だった。
班のほかのメンバーは実験に夢中で、わたしたちの方には目もくれていなかった。
きみにそう聞かれたのはほんとうに突然で、なんの前触れもない。
「……亮は、いるの?」
びっくりして、思わず質問で返しちゃった。
こちらを見向きもせずに、口だけで言われた言葉は、わたしを緊張させるのにじゅうぶんな威力を持っていたから。
亮に聞かれて、どきっとしたんだ。
だって、そう聞いてきたきみこそが、わたしの好きな人だったから。