神様の恋まじない

 目が合ってもすぐにそらすのに、会話もまともにできなくなったのに。

 そもそも最初に避けるようになったのはそっちなのに。

 なんでこっちが決意を固めようとしているときに限って、そっちから近づいてくるの……?

 こんなんじゃ、好きって気持ちを忘れられそうにないよ……。

 わたしの問いかけに黙ったまま、一瞬目が合ったかと思えばまたいつものようにすぐ逸らされた。

 たったこれっぽっちのことにどきどきする自分がいやになる。

 同じくらい、無神経な亮にもほんの少しだけいらついた。

 本当は亮、わたしがまだ亮のことが好きだって気付いてて、小学校の時の腹いせにからかってるんじゃない?

 そう思えるくらいに、亮の行動はちぐはぐだ。

 なにも会話がないまま、わたしたちがいる教室の前をぞろぞろとみんなが歩いていく。

 誰ひとりとしてわたしたちには気付いていないみたいだけど。

 そして、人の流れが完全に過ぎ去ったあとだった。

 亮がおもむろに口を開いたのは。

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