神様の恋まじない
「それ、律のものまね? 全然似てないし」
「そ、そっかな……」
自分ではけっこう似てると思ったんだけど。
でも、親友の亮が言うのならやっぱり似てないんだろうな。
……こんな軽口も、だいぶ減ったよね。
これからはもっともっと、減っていくんだろうな。
今日こうしているのが奇跡みたいなもので……。
彼女がいる亮とこんなふうになふたりきりでいるのは、いけないことで……。
好きでいることも、本当は。
……おまじないに頼る前に、本気で忘れる努力をしよう。
さいごにいい思い出をもらったと思って。
そうしているうちに、きっとゼロになる。
昔の名残で、どうしても心の中で呼んでしまう亮の名前も。
そのうち本当に、心の中で呼ばなくなる日がくるのかな——。
……そうだ。
静まり返ったふたりきりのこの教室に、ぜんぶぜんぶ置いていこう。
亮への気持ちを、一滴残らず——。