神様の恋まじない

「まりか、俺は……、」

「いまさら名前でなんて呼ばないで!」

 伸ばされた亮の手を、思いっきり跳ねのけた。

 ……どうして、そんな傷付いたような顔するの?

 ずるいよ、亮……。

「わたし、亮にだけは『変わった』なんて言ってほしくなかった。そんなこと、絶対言ってほしくなかった!」

 亮に涙を見せたのなんていつぶりだろう。

 もしかしたら初めてなんじゃないのかな。

 けど、そんなことはもう、どうだっていいんだ。

 またきつく、亮をこれでもかというほど睨みつけた。

 恋まじないが本物なら、わたしはこの気持ちを、亮を想うこの気持ちを消してもらう——!

「……もう、消す。こんな気持ちなんか、神様に消してもらうから……っ」

「まりか……っ!」

 わたしを呼び止める亮の声が聞こえたけれど、無視して走った。

 そのときの亮がどんな顔をしていたかなんて、わたしには知るよしもなかった。
 

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