愛し愛され愛を知る。【完】
「よしよし、泣かないのよ悠真。おやつあるから食べようね」
「うっ……ひっく……」
「朔太郎くんも、良かったら一緒にお茶しない?」
「……いや、でも……」
「さくいや! ゆうま、さくといっしょいや!」
「悠真……」

 先程のやり取りが余程嫌だったのか、悠真は朔太郎と一緒に居るのを酷く嫌がってしまう。

「姉さん、すみません。俺、今日は傍に居ない方がいいと思うんで……」
「分かった。ごめんね、朔太郎くん。一晩経てば悠真の機嫌も直ると思うから」

 嫌がられた事がショックなのか、いつになく元気のない朔太郎に声を掛けた真彩は悠真を連れて自室へ戻って行った。


「そうか、そんな事があったのか」
「すみません、悠真が我がまま言ったみたいで」
「いや、仕方ねぇだろ。悠真からしてみれば突然公園に連れてってもらえなくなってストレス溜まってたんだろ」
「でも、仕方のない事ですから。悠真にはよく言って聞かせます」
「悪いな、不便かけて」
「いえ」

 そもそも悠真が公園に行けなくなったのは莉奈や作馬が敵対関係にある箕輪組と半年程前から協力関係にある八旗組の関係者だった事が原因なのだ。

 理仁の見立てでは恐らく作馬が八旗組幹部の命令で、悠真を通して鬼龍組を探っていると考え今後一切莉奈や作馬との接触を断つ為に取られた策なのだが、幼い悠真にそのような話をした所で分かる訳もなく、今日のような出来事が起こってしまった。

 ただ、一晩経てば悠真の機嫌も直ってどうにかなると考えていた真彩たちだったのだけど、これが原因で飛んでもない事態に発展していく事になる。
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