愛し愛され愛を知る。【完】
「何だ?」
「先程はすみませんでした。色々とご迷惑をおかけして」
「迷惑だなんて思ってはいない」
「……理仁さんは、知っていたんですね、惇也が八旗組に居る事も、私と惇也の関係も、悠真の父親が、惇也だった事も……」
「ああ、悪かったな、言っていなくて。悠真の父親については朔から聞いた。お前の過去を探るような真似をして済まないとは思ったが、お前の事はある程度知っておく必要があったからな」
「いえ、それは構いません。朔太郎くんに話せば、自然と理仁さんにも伝わるかもとは思っていましたから……それでその、あの人、何か言っていましたか?」
「……自分と血が繋がっているなら悠真を引き取りたいと言っていたな」
「…………そう、ですか…………」
「真彩、お前が今考えている事を当ててやろうか?」
「え?」
「お前は鬼龍組に迷惑がかかるといけないから、俺の元から去るつもりなんじゃねぇのか?」

 理仁の言葉は当たっているのだろう。図星をつかれた真彩は返すことなく黙り込んでしまう。

「俺や鬼龍組を嫌いになったり、煩わしく思って離れるならば仕方がないと思う。けどな、アイツ絡みで迷惑をかけるからという考えだけなら、俺は全力でお前を止める」
「……だって、悠真は敵対している組の男の血が繋がっている子なんですよ? どう考えても、迷惑にしかならないじゃないですか」
「そんな事はない。確かに血の繋がりは否定出来ねぇだろうし、それを変える事も出来ねぇ。けど、お前らは結婚している訳じゃねぇし、悠真自身アイツが父親だという事も知らねぇんだろ? そんなの他人と変わらねえさ」
「でも!」
「俺たちはただの同居人で恋人でも何でもねぇから、俺がこんな事言えた義理じゃねぇかもしれねぇが……真彩、俺はあんな男にお前や悠真を渡す気は無い」
「……理仁……さん」

 今にも泣き出しそうな真彩を真っ直ぐに見据えた理仁がそう口にすると、思いがけない言葉に驚いたのか真彩も理仁を真っ直ぐに見つめ返した。
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