愛し愛され愛を知る。【完】
好きだと言えたら
 あの日以来、朔太郎を避ける事をしなくなった悠真は以前にも増して朔太郎を慕い、懐くようになっていた。

「さくー! はやくあそんで!」
「悠真、俺今勉強中なんだよ、あと少し待っててくれって」
「やだー! ゆうまはいま、さくとあそびたいの!」
「悠真、朔太郎くんを困らせちゃ駄目でしょ? 今はお勉強中なんだから大人しく一人で遊んでなさい」
「やだ! ママきらい! あっちいって!」
「悠真、そういう事ばっかり言うと、ママ怒るよ?」
「ママきらい!」

 日曜日、昼食を食べ終えて暇を持て余していた悠真は自室で勉強中の朔太郎の元から離れず我がままばかり言っているので真彩に怒られると、朔太郎を盾にしながら真彩に『嫌い』と言って、引き離されそうになるのを激しく抵抗していた。

「何だ悠真は機嫌悪いのか?」

 そこへ、用事を済ませて帰宅した理仁が通りがかると、駄々をこねる悠真に声を掛けた。

「りひと!」
「理仁さん、お帰りなさい」
「ああ、ただいま。それで、悠真は何を騒いでるんだ?」
「すみません、俺が今勉強中で相手してやれないから……」
「いえ、朔太郎くんは悪くないんです。悠真が我がままばかりで……」

 理仁に問われ、朔太郎と真彩は事の次第を説明するも、当の本人は悪びれた様子もなく、理仁に抱っこされてご満悦だ。

「そうか。まぁ遊び相手の朔が忙しいと悠真は不満だろうな。それなら俺が相手してやる。公園でもいいが、これから天気も崩れるらしいからな。ショッピングモールにでも行くか。真彩、悠真を遊ばせるついでに買い物も済ませたらどうだ? 翔が空いているから同行させよう」
「でも、今戻ったばかりで理仁さんも翔太郎くんもお疲れでしょうから……」
「俺は構いません。それでは兄貴、急いで車を表に準備して来ます」
「ああ、頼むな。ほら悠真、出掛けるから支度して来い」
「おでかけ! わーい! さくはいかないの?」
「ごめんな、帰って来たら遊ぼうな」
「わかった! ママ、はやくはやく!」
「わ、分かったから引っ張らないで。すみません理仁さん、それでは急いで準備して来ますね」
「ああ」

 こうして理仁の提案によって、真彩たちはショッピングモールへ出掛ける事になった。
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