愛し愛され愛を知る。【完】
「……そうか。それなら、互いに立ち会い人を付けての面会を要求するから、少し待っていろ」
「はい、お手数お掛けしますが、よろしくお願いします」
「……悠真には、この先も父親の事を伝える気はないのか?」
「……伝えたくはないです。でも、果たしてそれが正解なのか、悩んでいます」
「そうか。まぁ、あくまでも俺個人の意見としては、言わないままの方がいいと思う。だがな、俺も実父が生きている事を知った時は、何故もっと早く教えてくれなかったのかと母親を恨んだ事があった。どんな人間だとしても、生きていたなら一目でいいから会ってみたかったという思いがあったからな。まぁ大人になってとんでもないクズだったと知ってからは、やはり会う必要は無かったと納得はしたが、幼い頃は父親という存在が恋しかったのは事実だ。だから、悠真がもう少し色々な事を理解出来る年齢になったら、生きている事実は伝えるべきかもしれない」
「……そう、ですよね。どんな人でも、悠真にとってはこの世で一人の父親ですものね……。この件は、もう少し良く考えてみます」
「ああ、納得のいく答えを出すといい。一生隠すと決めるなら、檜垣にもそれを伝えて納得させなきゃならねぇからな」
「はい」

 話す前はどこか表情が晴れなかった真彩だったけれど、理仁に話をした事で少しだけスッキリしたのか話を終えた頃に真彩が見せた笑顔は晴れやかなものだった。
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