愛し愛され愛を知る。【完】
 それから数日が過ぎたある夜、帰宅した理仁に呼び出された真彩と朔太郎と翔太郎は客間へと集まった。

「悪いな、わざわざ集まって貰って。実はな、明後日の午後、八旗組の若頭、檜垣と真彩の面談が決まった。俺が同席したいのは山々なんだが、『組長』としての立場上、顔を出す訳にはいかねぇんだ。だから朔と翔に同席して貰いたい。八旗組の方も二人付けると言って来てるからな」

 話は惇也と真彩の面談日の事で、日時や時間などの詳細が理仁の方から告げられる。理仁自身もその場に同席したい思いはあったものの、理仁と真彩は婚姻関係もなければ交際関係もなく、あくまでも雇用主と従業員。そんな真彩と若頭の惇也が話し合う場に組織の組長という立場の人間が同席するという状況は芳しく無い為、朔太郎と翔太郎を同席させる事になったのだ。

「わざわざ話し合いの場を作ってくださってありがとうございます」
「話し合いはその一度きりで終わりにしたい。悪いが、それまでにきちんとどうするか決めておいてくれ」
「はい、分かっています」

 真彩の中で、悠真と惇也の事をどうするかはもうほぼ結論が出つつあった。ただ、当日理仁がその場に居ない事を知った真彩は話し合いの場へ向かう前にもう一度理仁と話をしたいと思っていたので、

「あの、理仁さん、この後少し話が――」

 この後少し時間が取れないか確認しようと真彩が口を開きかけると、

「理仁さん、大変です!」

 部屋の外が慌ただしくなったのとほぼ同時に組員の一人が焦った様子で声を掛けてきた。
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