愛し愛され愛を知る。【完】
「ひとまずここで待機してましょう」
「こんな所があったんだね」

 眠っていた悠真を抱き抱え、朔太郎に連れられてやって来たのは離れにある地下室だった。

「先代の頃から作られていたんスよ。組に関係無い者が屋敷に居る時に襲われる事も想定して、その人たちに危険が及ばないようにと。まぁ、シェルター目的みたいな感じっスね」
「そうなんだ」
「ママぁ……ゆうま、ねむい……」
「あ、そうだよね、ごめんね、もう大丈夫だから寝ようね」
「うん……」

 眠っている所を起こされて些か不機嫌だった悠真だけど、相当眠いようでグズる事もなくすんなり眠ってしまう。

 地下室内は8畳程とそこまで広さもなく、あくまでも一時的な避難場所という形で作られているようで布団と少しの食料品などが用意されているだけ。

 布団に悠真を寝かせた真彩は未だ拭えない不安を朔太郎に打ち明けた。

「ねぇ朔太郎くん。理仁さんたち、大丈夫かな?」
「まぁ、どうして箕輪組の若頭が直々に訪ねて来たのかは分からねぇっスけど、流石にここでドンパチしようって事はないでしょうね。相手もそこまで馬鹿じゃないだろうし」
「そっか。それなら安心……なのかな?」
「そうっスね……」
「……ごめんね、朔太郎くん」
「何で姉さんが謝るんスか?」
「だって、朔太郎くんは理仁さんの傍に居たいだろうに、私や悠真がいるからここで待機になっちゃって……」

 真彩は自分や悠真が居なければ地下に身を潜める事も無く、朔太郎だって理仁の傍で戦力になれるだろうに、それが出来なくてもどかしさを感じているのではと気にしていたのだけれど、朔太郎はそれを否定した。
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