愛し愛され愛を知る。【完】
「部屋まで送っていただいてありがとうございます」
「いや、元はと言えばお前らは巻き込まれただけだからな」
「あの、箕輪組の方とは本当に大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、箕輪の若頭は東堂と言ってな、実を言うと俺と東堂は旧知の仲なんだ。まぁ多少会話を交わす顔見知り程度のな」
「そうなんですか」
「ただ、箕輪と鬼龍は敵対関係にあるから表立って関わる事はそうそうねぇ。有るのは余程の用だと思ってる。けどまあ、今回の事は東堂の勘違いだろうから心配する必要はねぇさ。それよりも、お前は檜垣との話し合いに向けて考えを纏める方が先だぞ」
「あ、その事で、理仁さんに聞いてもらいたい事が……」
「ん? 何だ?」
「あの私、やっぱりこの先も悠真には父親が惇也だと話さない事に決めました」
「そうか……本当に良いんだな?」
「悠真にとっては父親だし、本当は話した方が良いのも分かるんですけど、でも、惇也はきっと悠真の事を心から歓迎なんてしていないから……そんな人を父親だと教えたくないんです」
「そうだな。確かに、檜垣はお前や悠真を歓迎して引き取るというより、組に利益が有るかどうかで判断している気がする。大方お前たちが八旗に来れば、俺ら鬼龍の弱みを握れるとでも思ってんだろうしな」
「だけどもしこれから悠真が成長していく過程で知ってしまう事があれば、その時は包み隠さず話をしようと思ってます」
「……そうだな、これからも鬼龍にいる以上、八旗との関わりも避けられねぇし、悠真が小さいうちはいいかもしれねぇが、成長すれば何処から情報が漏れるとも分からねぇ。その時はきちんと話してやれば悠真も理解するだろうし、俺も言って聞かせてやるから心配するな」
「……はい、ありがとうございます」

 真彩はこの話をしながら、理仁に問いたい事があった。

『私や悠真は、いつまで此処に居ていいのか』という事を。
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